日08-163
「蛇にピアス」 ![]()
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2008(平成20)年6月9日鑑賞<GAGA試写室>
監督・脚本:蜷川幸雄
原作:金原ひとみ『蛇にピアス』(集英社刊)
ルイ/吉高由里子
アマ/高良健吾
シバ(彫り師)/ARATA
ルイの友人/あびる優
ルイのバイト仲間/ソニン
刑事/市川亀治郎(特別出演)
ルイのバイト先のマネージャー/井手らっきょ(特別出演)
暴力団員/小栗旬(特別出演)
警察官/唐沢寿明(特別出演)
暴力団員/藤原竜也(特別出演)
2008年・日本映画・123分
配給/ギャガ・コミュニケーションズ
<蜷川幸雄が、監督としてあの芥川賞作品を!>
2004年2月20日の授賞式に、金髪で胸の開いたピンクのキャミソールドレス姿で登場したのが当時20歳の金原ひとみ。彼女が『蛇にピアス』で『蹴りたい背中』の綿矢りさと共に第130回芥川賞を受賞したのは2004年のこと。そのタイトルも奇妙なら、そこで描かれる世界やテーマも、舌へのピアスあり、スプリットタンあり、刺青あり、SMありという何とも異様なもので、およそ若い女性作家には似つかわしくないものばかり・・・?
その小説の主人公である19歳の女性ルイ(吉高由里子)は、多分金原ひとみの感性を体現したものだろうが、そんな若者向けの異色小説(?)を映画化するについて、金原ひとみからラブコールを受けたのは演劇界を代表する演出家である蜷川幸雄。もっとも、いくらすごい演出家といっても、1935年生まれの彼は既に72歳。いくら何でも金原ひとみの世界に同調し、その作品を映画化するについて監督を引き受けるとは思わなかったが、実は彼は金原ひとみからの要請を受ける前から『蛇にピアス』の映画化にご執心だったというから驚き・・・。
<吉高由里子の体当たり演技に注目!>
去る6月3日に観た『きみの友だち』(08年)で、14歳の主人公恵美の同級生ハナちゃん役を演じていたのが、どう見ても1人だけ大人に見えてしまう美人女優の吉高由里子。そんな19歳の吉高由里子が、『蛇にピアス』ではSMセックスシーンを含むフルヌード姿で19歳のルイ役に体当たりで挑戦!
ルイがはじめて体験する、蛇の舌、顔中のピアス、そして背中に龍の刺青を入れた男アマ(高良健吾)とのセックスは私の目には割と淡白で味気ないもの・・・?他方、サディストの彫り師シバ(ARATA)とのセックスは、19歳にして自分はマゾ女だと自認しているルイだけあってかなりハード・・・?と思い一瞬大きく期待!しかし、そのSMぶりは、せいぜいシバが皮のベルトでルイの手を後ろ手に縛る程度だから、杉本彩主演の『花と蛇』1、2を堪能してきた私には、その刺激性と官能性はイマイチ・・・?
もっとも、19歳の清純派女優吉高由里子と、今や爛熟期の盛りにあるSM女優杉本彩をまともに比べるのはあまりにも酷。吉高由里子は吉高由里子なりに、蜷川幸雄演出を受けて、よくぞここまでのSMセックスに体当たり演技で挑んだもの、と誉めるべき・・・。
<吉高由里子は、黒谷友香越えを!>
モデル出身の美女黒谷友香の初主演作は、年上の男性との不倫と若い彼氏との刺激的な愛の中を生きるヒロインを官能美タップリに描いた『TANNKA 短歌』(06年)だった。これは俵万智の原作を映画化した阿木燿子初の監督作品だが、ここでそれまでの清純派女優黒谷友香は女性の目で描く大胆なセックスシーンに体当たり挑戦!
私はその評論で「体当たり演技に挑戦した黒谷友香には、今後一皮も二皮もむけてもらいたいもの。しかし、同じモデル出身の美女伊東美咲に続いて大ブレイクするには少し力不足・・・?」と書いた(『シネマルーム12』272頁参照)が、その後の推移はまさにこの分析どおり。つまり、彼女の大ブレイクは遠いばかりか、第2、第3の主演映画のオファーもこない様子。
他方、その卓抜した目で蜷川幸雄が見い出し、彼が演出した舞台『身毒丸』(97年)の主役に抜擢したのが、当時15歳の藤原竜也。藤原竜也を今や日本映画界を代表する若手俳優にまで成長させた大演出家蜷川幸雄から、吉高由里子は新たなミューズとして指名されたのだから、現時点ではその将来性は抜群。そんな期待感を持って、吉高由里子には是非黒谷友香越えを!
<スリスとサスペンスは、若い女性作家には苦手・・・?>
ルイがなぜアマに惹かれたのかは、私にはよくわからない。また、同棲生活を続けるについて、ルイはアマのホントの名前も、ホントの年齢も、さらにはそのバイト先さえも知らないでオーケーというからビックリ。ルイにしてみれば、アマがただやさしくしてくれるだけで十分だったらしい・・・?
そんなアマのルイに対するやさしさの表れが、ルイの友人(あびる優)と一緒にアマと飲み遊んだ後の帰り道で2人のチンピラに絡まれた時のアマの反撃。ヤサ男だと思っていたアマが意外に強いのにはビックリだが、絡んできたチンピラの1人には逃げられたものの、もう1人に対してアマは瀕死の重傷を追わせたうえ、ルイへの「愛のあかし」としてその男から抜き取った血まみれの2本の歯をプレゼント。ヤクザの組に属していたそのチンピラの死亡をテレビのニュースで知ったルイは、言葉巧みに(?)アマの赤毛を変色させたり、龍の刺青を目立たないようにするため長袖シャツを着ることを納得させたりしたが、組の若いモノをそんな目にあわされたヤクザからの反撃は・・・?また、世界に冠たる捜査能力を誇る(誇っていた?)日本の警察の殺人犯の捜査は・・・?
この小説や映画は金原ひとみの感性をルイに託して描くのが主眼だから、『○○サスペンス劇場』のようなスリルとサスペンスには基本的に無縁。したがって、ある日アマが無惨に痛めつけられた死体となって発見されても、その犯人捜しはあいまいなまま。やはり、スリルとサスペンスは、若い女性作家金原ひとみには苦手・・・?
<「画竜点睛を欠く」の故事は・・・?>
コミックか、せいぜいケータイ小説しか読まない最近の若い子は、「画竜点睛を欠く」などという難しい故事は全然知らないかも・・・?しかし、さすが芥川賞作家金原ひとみは、その方面にも造詣が深いのは当然。
つまり、「舌にピアス」に続く、ルイのシバへのリクエストは背中への彫り物だが、そこで悩ましいのは絵柄の決定。当初ルイはアマと同じ龍の絵を希望したのだが、シバの身体にある麒麟にもホレたルイは、結局欲深いことに(?)龍と麒麟の両方をその白く美しい背中に彫ってもらうことに・・・。しかし、イザ実行という段になってルイがシバに頼んだのは、龍にも麒麟にも「目の玉を入れないでくれ」ということ。さて、そのココロは・・・?
それくらい理解できなければ、いくらあなたが芥川賞作家金原ひとみのファンだといっても、金原文学の神髄まで理解できていないかも・・・?
<「痛み」だけが生きてる実感・・・?>
えらく気楽にルイに対して「舌にピアス」を勧めたアマだったが、シバの言葉によるとアマは舌に穴をあける時、あまりの痛さに悶絶したらしい。しかし、痛みや出血に強いのが女。ルイは舌に穴をあける時も全然痛そうな顔をしないばかりか、背中に龍と麒麟の刺青を彫る時もひと言も痛いと言わないから、シバはルイの痛さに耐える力にビックリ。しかし、刺青彫りの痛さに耐え、舌に入れたピアスの穴を少しずつ広げていく痛さにも耐えていたルイは、スプリットタン、龍と麒麟の刺青という2つの目標を達成してしまうと、がぜんその後の生きる目標を失ってしまったよう・・・。つまり、金原ひとみが描きたかった奇妙な19歳の女の子ルイの生き方は、常に痛みを伴っていることが不可欠だったわけだ。
2つの目標を達成してしまったルイはその後酒びたりの生活に陥ったため、アマはそれを心の底から心配していたが、ある日そのアマが何の前触れもなく連絡が取れなくなったから大変。アマが急に失踪した(?)のは、あの日のあのチンピラ退治の報復を受けたため・・・?アマの突然の失踪に戸惑うルイは、ここではじめて19歳の女の子らしい反応をあれこれと示しはじめたが・・・?
<あのシーン、このシーンはどうやって撮影・・・?>
『蛇にピアス』というショッキングなタイトルを最初に浮かびあがらせるのは、「スプリットタンって知ってる?」と言いながら、蛇のように2つに割れた舌を出すアマの異様な姿。まずは、蜷川幸雄演出による(?)ホントに舌の先が2つに割れた蛇のようなアマの舌にビックリ。また、その魅力に惹かれたルイも、アマから紹介されたシバの手によってまずは舌に穴をあけピアスを入れることに。
「蛇の舌」は、舌に穴をあけて入れたピアスのサイズを少しずつ大きくしていき、最終的に舌を2つに割ることによって完成するらしいが、吉高由里子はホントにそんな肉体改造に挑戦・・・?そんなバカなことはありえないが、蜷川幸雄の演出によって再三登場する吉高由里子による「舌にピアス」のシーンや、ラストに登場する舌の穴に自ら糸を通すシーンは、私には正視しづらいもの・・・?まさか、ホントに吉高由里子の舌に穴をあけることはないはずだから、ピアスを少しずつ大きいサイズに替えていくシーンや舌の穴に糸を通すシーンは、一体どうやって撮影したの・・・?
2008(平成20)年6月10日記