洋05−122

「アイランド」
           

                2005(平成17)年7月23日鑑賞<梅田ピカデリー>

監督・製作:マイケル・ベイ
リンカーン・6・エコー、トム・リンカーン/ユアン・マクレガー
ジョーダン・2・デルタ、サラ・ジョーダン/スカーレット・ヨハンソン
アルバート・ローラン/ジャイモン・フンスー
スターク・2・デルタ/マイケル・クラーク・ダンカン
メリック/ショーン・ビーン
ワーナー・ブラザース映画配給・2005年・アメリカ映画・136分

<映画は企画が勝負!舞台は2019年の近未来>
 『アイ,ロボット』(04年)は2035年の近未来が舞台だったが、この『アイランド』が描く近未来はもっと間近の2019年。ここでは食肉用の牛のクローンではなく、いよいよ本格的クローン人間が登場。
 クローン人間の姿カタチはもちろん人間そのものだが、その年齢(製造年?)は大体2、3歳。その頭の中の記憶はすべてあらかじめインプットされた情報によるものだし、汚染された外界から隔離されたコミュニティでの単調な生活もすべてあるひとつの「目的」のため・・・。無作為の抽選で選ばれた幸運な者だけが行くことができるという「海に浮かぶ緑豊かな島」アイランドとは一体何・・・?そしてそれはホントに存在するの・・・?
 そんな企画の面白さがこの映画の生命線。クローン人間たちが暮らす生活棟は無機質だが、広々として美しいもの。しかし一瞬覗いたクローン人間の製造過程はちょっとコワイ・・・?

<クローン人間の所有者は誰・・・?>
 理想的な共産主義社会は、欲するものがすべて与えられる社会だから、「貧富の差」という概念そのものが無くなっているはず。しかし、2019年という時代はまだ「貧富の差」が歴然とある社会。クローン人間を欲するのは、まずそれを「影武者」として活用したいと考える超VIPな人たちだろう。しかしそれ以外にも、自分の健康や若さをキープするためのスペアとしてクローン人間は重宝できる。すなわち、クローン人間をたくさん作っておけば、必要に応じて自分の弱った臓器を取り替えたり、姿カタチを若い方に切り替えることが出来るわけだ。したがってこの映画でも、クローンを所有しているのは大統領やVIPたちそして美貌の女優などに限定されているうえ、その製造の秘密は固く守られている。考えてみればそりゃ当然・・・?

<ヘンなロボット?ヘンなクローン?>
 『アイ,ロボット』(04年)もこの『アイランド』(05年)も、主人公(?)はヘンなロボットとヘンなクローン・・・?そしてこの場合の「ヘン」というのは、ロボットらしからぬロボットそしてクローンらしからぬクローンという意味。これはつまり、どこかに人間的な感覚を持っているということだ。そのため、そのヘンなロボットは、ロボットが絶対に持ってはならない「怒り」などの感情を持っていたし、この映画でのヘンなクローンである「リンカーン・6・エコー」(ユアン・マクレガー)は、ヘンな夢を毎晩見るうえ、自分以外のクローンたちが全員納得し何の疑問も持たないことについて、ついいろいろと質問が・・・?そんな質問魔(?)のリンカーン・6・エコーがある日自分の目で見たのは、換気口から紛れ込んできた1匹の蛾・・・。外界は汚染されて、生物は何ひとつ存在しないはずなのに、なぜ・・・?そんな疑問が、その後のとんでもない物語を生み出していく出発点・・・。

<「当選!」に大喜びのジョーダン・2・デルタだったが?>
 住居棟に住むクローンたちの唯一の望みは、夢の島「アイランド」へ行くための抽選に当選すること。アイランドとはどんな島で、そこにどんな生活が待っているのか?クローンたちは誰も知らないのだが、日々くり返される宣伝によって、クローンたちは完全に「洗脳」されていた・・・。
 そして今日、その抽選で見事当選したのはジョーダン・2・デルタ(スカーレット・ヨハンソン)。リンカーン・6・エコーがいつも気にかけて、「接触」を試みていたジョーダン・2・デルタは有頂天になってこの当選を喜んでいたが、質問魔(?)のリンカーン・6・エコーには一抹の不安が・・・。それはなぜ・・・?この2人は再び「アイランド」で会うことができるのだろうか・・・?

<クローン人間たちの総元締めは・・・?>
 クローン人間を製造し、これを管理している「総元締め」はメリック(ショーン・ビーン)。彼は何千体というクローン人間を製造、管理しているが、当然その注文者は超VIPばかり。彼が「アイランド」という夢を作り出し、クローン人間たちに対して、その夢が叶うことだけを考えるようにコントロールしているのは一体何のため・・・?
 ちなみにリンカーン・6・エコーとジョーダン・2・デルタが逃げ出したことによって発生した不具合が明らかになると、さすがアメリカ社会は対応が早い・・・?日本の某自動車メーカーのM社のように、不具合を隠蔽するのではなく、自らその欠陥を注文者に対して自主申告し、無償リコールを申し入れたのはさすが・・・?しかし、事態はもはやそれでも収拾がつかない状況に・・・?

<どちらがクローン?どちらがオリジナル・・・?>
 クローンには、手首にそのナンバーが刻印されるとともに、腕輪がはめられているから、誰にでもすぐにわかるようになっている。しかし、もしこの腕輪が外されたら・・・?
 リンカーン・6・エコーは、ジョーダン・2・デルタとともにクローンの住居棟を逃げ出して、汚染されたはずの人間の世界に入り込んでいった。そして遂には何とリンカーン・6・エコーの所有者であるトム・リンカーン(ユアン・マクレガー)の住む大邸宅に。その家の中には、いつもリンカーン・6・エコーの夢の中に登場してくるカッコいいボートの模型が。そんな中でクローンのリンカーン・6・エコーとトム・リンカーン本人が、「ご対面」・・・。
 ここらの面白さは、あの『フェイス・オフ』(97年)におけるホンモノ人間と顔の生皮を剥いで作ったコピー人間とのご対面と同じようなもの。「1人2役」は映画ならではのテクニックだが、こういううまい設定をするとその面白さを存分に発揮できるもの。
 さらに、追っ手が迫る中、少しずつ知恵をつけてきたこのリンカーン・6・エコーが、とっさに腕輪をホンモノのトム・リンカーンの腕に付けたものだから、追っ手は・・・?

<アクションはさすが!>
 この映画の監督・製作は『アルマゲドン』(98年)、『パール・ハーバー』(01年)のマイケル・ベイ。したがって2度3度と登場するカーチェイスの迫力と規模の大きさは当然として、この映画ではじめて見た「空飛ぶジェットバイク」は面白い道具!この「空飛ぶジェットバイク」のスクリーン上への登場によって、リュック・ベッソン監督が『TAXi』(98年)で描いた近未来社会と同じような空中を飛び交う道路や線路を巻き込んでの「空中戦」は、さらにパワーアップ・・・!

<注目すべき2人の黒人俳優>
 この映画には注目すべき2人の黒人俳優が登場する。1人はスターク・2・デルタ(マイケル・クラーク・ダンカン)というクローン人間。彼が「アイランド」へ行けることになったのはいいが、その実態は・・・?『グリーンマイル』(99年)で奇跡を呼ぶ男ジョン・コフィの役を印象的に演じた大柄の黒人俳優で、この映画でも出番はほんの少しだけだが、印象に残る役柄を演じているので、要注目!
 もう1人は『アミスタッド』(97年)や『イン・アメリカ〜三つの小さな願いごと』(02年)でこれも印象に残る名演技を見せていた黒人俳優のジャイモン・フンスー。彼はクローン人間を製造、管理する総元締めのメリックの忠実な部下として仕えており、住居棟から逃げ出したリンカーン・6・エコーとジョーダン・2・デルタを追走する任務を与えられたが、その追跡の中で生まれた苦悩とは・・・?彼は、ストーリー展開上の要所要所に登場するので、その役柄にも要注目!!

<クローン人間たちの反乱は?>
 『アイ,ロボット』では、人間の知能を持ったロボットの登場によって従来のシステムは大混乱となり、最後には「スパルタクスの反乱」ならぬ「ロボットの反乱」がおこった。それと同じようにこの映画でも、人間の知能に学んだリンカーン・6・エコーが目指すのはクローン人間たちの解放!さてそれは一体どうやって・・・?そして、その結末は・・・?

<この映画は問題提起型・・・?>
 クローン人間の登場は近未来において当然予測されるもの。しかし「ロボット時代」における「ロボット3原則」のような、クローン時代における人間とクローンとの関係の諸問題の整理は全くなされていないのが現状。この映画はクローン人間活用の1つのパターンやそのクローン人間が「反乱」をおこした場合の1つの方向性を描いてはいるが、決して1つの結論を導いたり、ましてや観客に対して何らかの価値観を強要するものではない。それをしようとしても多分今の時代では不可能だろう。したがって、この映画が見せる「ラスト」はきわめて人間的なもの(?)となっている・・・?しかしこの映画がクローン人間についてのさまざまの重要な問題提起をしていることはたしか。この映画を観たのを機会に、クローン人間をめぐる法律的諸問題について、どこかの法科大学院で研究を開始してもらいたいものだが・・・?
                                  2005(平成17)年7月26日記