洋画04年NO51

「デイ・アフター・トゥモロー
           (THE DAY AFTER TOMORROW)


       2004(平成16)年5月21日鑑賞<試写会・大阪厚生年金会館芸術ホール>

監督:ローランド・エメリッヒ
ジャック・ホール/デニス・クエイド
サム・ホール/ジェイク・ギレンホール
ローラ・チャップマン/エミー・ロッサム
ジェイソン・エヴァンス/ダッシュ・ミホーク
フランク・ハリス/ジェイ・O.サンダース
ルーシー・ホール医師/セラ・ウォード
テリー・ラプソン/イアン・ホルム
ベッカー副大統領/ケネス・ウェルシュ
20世紀フォックス映画提供・2004年・アメリカ映画・124分

<この映画のテーマとその現実性>
 この映画は、「地球温暖化そしてそれによる地球の北半分の寒冷化と新たな氷河期の到来」という、近未来に必ず到来する(?)であろう地球的規模の大災害を真正面から描くもの。そしてそれと共に、このような「人類の悲劇」の中でも失われない、学問の絆で結ばれた父と子の信頼そして若い男女の愛情をヒューマンあふれるタッチで描くもの。
 2002年から始まったこの映画の製作期間中、現実に次のような異常気象が発生した。
 @南極のラーセンB氷棚の崩壊と海への落下(2002年3月)
 A中国大陸中央部での卵大の雹(ひょう)を伴う嵐の発生(2002年7月)
 B後に「世紀の大洪水」と呼ばれたヨーロッパでの大洪水の発生(2002年8月)
 Cアメリカ13州での暴風雨と竜巻の発生(2002年11月)
 したがって、この映画の冒頭に描かれている、観ているだけでゾッとするような南極の氷棚の崩壊シーンは、決して映画だけの世界ではない。また、映画に登場する東京で降った雹(ひょう)、ハワイを襲ったハリケーンそしてロサンゼルスでの大竜巻の発生やニューヨークを襲った大津波(洪水)も、いつかこの地球を襲うであろう大災害であることはまちがいない・・・?またそれは、100年後、1000年後のことではなく、ひょっとしたらこの映画のタイトルどおり、「THE DAY AFTER TOMORROW」のことなのかもしれないのだ・・・?

<地球温暖化とそれに伴う異常気象>
 パンフレットによれば、この映画における「科学的仮説」は、デイビッド・スティップ筆『フォーチュン・マガジン』(2004年3月7日)を基にしているようだ。そしてこの地球的規模の大災害は、すべての国家安全保障問題の根源であるため、ペンタゴン(アメリカ国防総省)の戦略立案者たちがその問題に取り組んでいるとのこと。デイビッド・スティップが科学的に予見する地球的災害の近未来図の骨子は次のとおりだ。
 @地球の温暖化の進行による気温の上昇
 Aそれにより、北極の氷河から溶け出した淡水が北大西洋に流れ込み、海水の塩分
  濃度を低下させる
 Bアメリカ東部と北欧は、熱帯地方から北へ流れる大西洋海流によって暖められている
  が、海水の塩分濃度の低下によってこの機能が崩壊する
 Cそのため、地球の北半分は急激に寒冷化し、氷河期を到来させる

<京都議定書の意義と限界>
 地球温暖化の危機は、環境問題一般としてのみならず、科学的にも政治的にも現実に対応しなければならないテーマとして捉えられてきたのは1990年代に入ってから。1992年の地球サミットでは、地球温暖化防止条約に150カ国以上(現在は185カ国とEUが批准ずみ)が調印した。そして1997年12月、京都で開催された地球温暖化防止京都会議において、先進国のCO2等の温暖化ガス排出量削減の義務的な数値目標を定めた京都議定書が「採択」された。日本政府は、2002年4月、この京都議定書を批准し、温暖化ガスの排出量削減努力を続けているが、つい先日発表された次の2つのデータでは、未だその目標の達成にはほど遠い状況。すなわち、@政府の地球温暖化対策推進本部が発表した2002年度の温室効果ガス排出量は前年度比2.2%増、90年比では7.6%増で、目標値を14%近く上回っている、A経済産業省がまとめた長期エネルギー需給見通しでは、温室効果ガスの約9割を占めるCO2の排出量が2010年度では90年比5%増になると予測している。
 他方、先進国VS発展途上国の対立、そして唯一の超大国アメリカのわがまま(?)による京都議定書への非協力的姿勢が温暖化ガス削減についての大きなネック。批准した先進国の温暖化ガス排出量の合計が先進国全体の55%以上になることが発効の条件となっている「京都議定書」は、批准ずみの日本やEU(欧州連合)などの合計で約44%にとどまっているため、未だ発効されていない。そんな中、本日(5月22日)の新聞報道によれば、17%の排出量を占めているロシアのプーチン大統領は、EU(欧州連合)との首脳会議後「批准に向けて(準備を)加速する」とはじめて肯定的な姿勢を示したとのことで、喜ばしい限りだが・・・?

<よみがえる、ある番組の記憶>
 そんな中、私は先日ある番組で見た地球温暖化に伴う恐ろしい現象を思い出した。それは温暖化に伴って、北極、南極の氷河が溶け出すことにより、海水の量が多くなり、水面が上昇するため、海抜の低いいくつかの島が海の中に入り込み消滅してしまうという問題を特集した番組だ。これは氷が溶けて、海水が増えれば、その分、陸地が減るという極めてわかりやすいもの。地球温暖化が何年後にどの程度の陸地をこのような結末に導くのかは、科学者の研究に委ねなければならないが、考えてみれば恐ろしい限り。地球温暖化を招いているのは私たち1人1人の人間の生活の営みによるものだということを忘れてはならない。
 この映画では、「氷河期」になったアメリカ合衆国の国民の多くは、南にあるメキシコに「避難」することができた。そして大統領の死亡後、副大統領から大統領に就任したベッカー(ケネス・ウェルシュ)は、「アメリカ合衆国の反省と発展途上国への感謝」を述べたが、そうなってからでは既に手遅れ。まさに今日から、地球温暖化に対する国民、とりわけ先進国の国民の取り組みが要請されていることは明らかだ。

<3人のキーパーソン>
 この映画の主人公ジャック・ホール(デニス・クエイド)は、古代の気象を研究する気象学者。彼は自分の仮説を裏づけるため、今南極にいた。彼をトップとする助手のフランク(ジェイ・O.サンダース)と大学院生のジェイソン(ダッシュ・ミホーク)らの作業は、自分の仮説を立証する氷核の存在を明らかにするため、氷棚の中に掘削機を入れてサンプルを採取しようとするものだ。この時、氷棚に不気味に広がっていく亀裂。そして大地が割れるようにこの氷棚が割れ、突然これが陥没した。危機一髪、抜群の運動能力によって助かったジャックは、自説を確信し、科学者として地球の北半分についての氷河期の到来を訴えた・・・。
 この主張をインドのニューデリーで開催された会議で聞きながらも、それを現実的テーマとして取り上げなかったのは、アメリカ合衆国副大統領のベッカー。国民の不安を最小限におさえたり、国家経済を適正にコントロールすることは政治の重要な要素だから、ある意味これは、政治家として当然の選択かもしれない。しかし結果的には、これが地球の北半分にあるアメリカ合衆国に大惨劇をもたらすことになった。
 他方、ラプソン教授(イアン・ホルム)は、スコットランドの気象観測センターで北海の海水温をチェックしているチームのボス。ラプソン教授は、海水温の急激な異常低下は、ジャックの学説とその警告を裏づけるものだと確信してこれをジャックに報告し、以降ジャックとの共同作業に没入することに・・・。この3人が、この映画の異常気象をめぐるキーパーソンだ。

<父子の絆と男女の愛をめぐるキーパーソン>
 ジャックの17歳の息子サム(ジェイク・ギレンホール)も父親の血をひいた優秀な子供だが、今はちょっと心配の種が・・・?そのサムは、飛行機嫌いにもかかわらず、今日はニューヨークで開催される高校生のクイズ大会へ参加することに。その動機は、どうもかわいい女の子ローラ(エミー・ロッサム)がいるためらしい・・・?科学者として仕事一筋の人生を歩んできたジャックは、当然息子との対話は途切れがち・・・。これをフォローしていたのは、妻であり内科医であるルーシー(セラ・ウォード)。ニューヨークでのクイズ大会に出場したサムたちのチームは順調に勝ち進み、ついに地元の主催校との対決となった。しかしこの時、異常気象はいよいよ牙をむこうとしていた・・・。そんな中、サムとローラとの愛は・・・?そしてジャックとサムの父子の絆は・・・?

<迫力ある特撮場面に圧倒!>
 
サムとローラが滞在するニューヨークを襲う大津波(洪水)の特撮シーンは圧巻。「自由の女神」に向けて押し寄せてくる大津波は、ついに海岸線をこえて、高層ビルが林立するニューヨークのまちへ。大津波に襲われたニューヨークのまちには、大洪水が流れ込み、車や小さいビルはすべて流され、破壊された。この、大津波に襲われるニューヨークのまちのシーンは、これを観ている私たち日本人でもショックなのだから、アメリカ国民とりわけニューヨークの市民はどれほどのショックを受けることだろう・・・?この大洪水に襲われ、高層ビルの上部のみを残したニューヨークのまちは、その直後、急冷化と氷河期の到来により、一面の雪や氷となってしまうが、そのすばらしく美しい(?)映像にも大注目。
 その他、ハワイでのハリケーン、ロサンゼルスでの竜巻などの特撮シーンも圧巻。美しいのは、宇宙ステーションから見た地球そのもの。地球を覆う一面の雲や巨大な台風の海もステーションから見ていると美しいものだ・・・?これらの特撮シーンのための撮影現場での厳しいチャレンジの様子は、パンフレットの中に詳しく書かれているので是非それを参照してもらいたい。
 人間は理性と知性をもっているものの、やはり視聴覚に訴え、感情面(感性)を刺激することは重要。したがって、地球温暖化に伴う異常気象による地球的規模の大災害については、机上の議論をすることも大切だが、この映画を観れば、その恐ろしさが一発でわかるというものだ。

<ジャックはスーパーマン・・・?>
 単なる科学モノ、特撮モノとしないため、この映画ではジャックとサムの父子の絆を大きなテーマとしている。そしてそのためのストーリーは、ジャックがニューヨークにいる息子を必ず助けに行くと約束しこれを実行するというつくり方。そこで、ジャックが科学者としてアメリカ合衆国に対して最後の説明を尽くした後にとった行動は・・・?
 これは、いかにもアメリカ的(?)で無謀なもの。しかも、それを認めたのは妻のルーシー。その上、ジャックの助手のフランクと大学院生のジェイソンの2人も志願してこれに協力・・・。そしてその結末は・・・?
 地球の北半分の急冷化、氷河期の到来という科学的仮説をテーマとして設定し、自然の恐ろしさを大迫力で描きながら、他方で、ちっぽけな1人の人間の力でそこまでやるのはちょっと・・・?ジャックはひょっとしてスーパーマン・・・?
 まあしかし、この少し無理筋のストーリーづくりも、父子の絆の強さとその感動を盛り上げるためと割り切って考えればいいのかも・・・?それはともかく、この映画は観客全員に否応なく地球温暖化という問題を真面目に考えさせる内容であることはまちがいなく、おすすめ、必見の映画となっている。
                                2004(平成16)年5月22日記