日12-4

「逆転裁判」
    

                    2012(平成24)年1月16日鑑賞<東宝試写室>

監督:三池崇史
成歩堂龍一(熱血漢の新米弁護士)/成宮寛貴
御剣怜侍(冷徹な天才検事で、成歩堂の宿命のライバル、幼馴染)/斎藤 工
綾里真宵(成歩堂の上司・千尋の妹で、霊媒師の卵)/桐谷美玲
矢張政志(成歩堂の幼馴染、どこか抜けてるダメ男)/中尾明慶
糸鋸圭介(御剣に信頼を寄せる熱血刑事)/大東駿介
綾里舞子(霊媒師、千尋と真宵の母)/余 貴美子
裁判長(大法廷のベテラン裁判官)/柄本 明
綾里千尋(優秀な弁護士、成歩堂の上司で真宵の姉)/檀 れい
狩魔 豪(御剣の師匠で、40年間無敗を誇る伝説の検事)/石橋 凌
灰根高太郎(元法廷係官、「DL6号事件」被告人)/小日向文世
大沢木ナツミ(自称カメラマン、事件の目撃者)/谷村美月
御剣 信(弁護士、「DL6号事件」の被害者で怜侍の父)/平 岳大
生倉雪夫(「DL6号事件」の被告人の弁護士)/篠井英介
小中 大(フリーの雑誌記者、事件の目撃者)/鮎川 誠
2011年・日本映画・135分
配給/東宝

<ゲームがベースでも、やはり必見!>
 いろいろなゲームがはやっていることは知っていたが、「逆転裁判」なる「法廷バトル」ゲームの1作目が2001年にニンテンドーDSから発売されていたことを、今回の試写の案内ではじめて発見。「三国志バトル」も「戦国武将バトル」もさらには「忍者バトル」もゲームとして楽しめば面白いだろうから、きっと法廷バトルだって・・・。
 裁判モノ、法廷モノ映画は『12人の怒れる男』(07年)(『シネマルーム21』215頁参照)はもとより、ジョン・グリシャムの原作ものから松本清張の原作ものまで、多くの名作がある。私が書いた『名作映画から学ぶ裁判員制度』(2010年・河出書房新社)にはそんな見どころがいっぱいだが、そんな立場にある以上、いくらゲームをベースとして生まれた映画だとしてもちゃんと観なければ。そんな興味で試写室に赴いたが・・・。

<つくりはなかなか骨太だが・・・>
 検事や弁護士はあくまで専門職として刑事事件をそれぞれの立場で担当しているだけで、自らが殺人の当事者になったり、ましてや被告人にされることはありえないが、ゲームでは平気で弁護士や検事も殺されたり殺人の被告人にされたりするようだ。
 映画冒頭に殺害されるのは、本作の主人公である新米弁護士・成歩堂龍一(成宮寛貴)の良き理解者であると共に優秀な上司である綾里千尋(檀れい)。そして、その被告人とされたのが、何と千尋の妹で霊媒師の卵である綾里真宵(桐谷美玲)だ。成歩堂は「ここは俺が一丁頑張らなければ!」との思いで真宵の弁護を引き受けたが、対峙するのは冷徹な天才検事と評判の幼馴染の御剣怜侍検事(斎藤工)。ゲームのキャラを再現した衣裳やセリフ、そして証人尋問の風景、さらに現実の法廷とは似ても似つかない法廷の大仰さには日々法廷に出入りしている現職弁護士として私には違和感があるが、ストーリーのつくりは骨太でなかなかのものだ。
 凶悪犯罪の増加に対応して、20XX年に政府が新たに導入した『序審裁判』という手続きの中、裁判長(柄本明)から「綾里真宵は無罪!」の判決を勝ち取った成歩堂だが、その直後、御剣怜侍が殺人容疑で逮捕されたから大変!そりゃ一体なぜ?昨日の敵は今日の友。どこか抜けているダメ男・矢張政志(中尾明慶)と共に同じ幼馴染のために、ここはまた一肌脱がなくちゃ。そんな思いで再び成歩堂は御剣怜侍の弁護のために意気込んだが・・・。

<ストーリーは次第に複雑に>
 「逆転裁判」と名づけられたゲームだから、裁判の行方は逆転また逆転が売り。また「逆転裁判」の決めゼリフは「異議あり!」だから、その言葉が法廷シーンの随所に登場するのは当然。しかも、三池崇史監督だからプレスシートにあるように、「ケレン味たっぷりな演出」になるのも当然だ。てなわけで、後半からラストにかけては、ベテラン俳優の小日向文世扮する灰根高太郎という謎の人物や、過去に彼を弁護したという生倉雪夫弁護士(篠井英介)らが登場してくる。さらに、狩魔豪検事(石橋凌)は御剣怜侍が師と仰ぐ、40年間無敗を誇る伝説の検事だが、狩魔検事と過去に対決した御剣怜侍の父親である御剣信弁護士(平岳大)が登場するからストーリーは次第に複雑に。
 弁護士の父親を持ちながら、御剣怜侍はなぜ検事に?後半は御剣怜侍の子供時代の秘密がストーリー展開の軸となり、法廷内はまさにゲームのように「異議あり!」が連発される中、逆転また逆転の連続となる。くだらないギャクが再三飛び出すのはいかがなもの?と私には思えるが、ゲーム感覚で法廷を楽しむには十分な出来だ。したがって、ゲームだとバカにせず、意外に複雑なストーリー展開にしっかり対応を!

<幽霊に続いて、ペットの証人適格は?>
 三谷幸喜監督・脚本による『ステキな金縛り』(11年)では、西田敏行演ずる幽霊を深津絵里扮する新米弁護士が証人として申請したところから意外な展開が始まっていった。つまり、幽霊が「見える派」と「見えない派」によって、法廷ドラマは大きく変動していったわけだ(『シネマルーム27』191頁参照)。そこで私が提起した論点(?)は「幽霊も証人になれるか?」ということだが、三池崇史監督らしくケレン味たっぷりの本作では、後半からクライマックスに向けて灰根が飼っているペットであるオウムの「サユリさん」が証人になれるのか?が論点になると共に、証人になった「サユリさん」のある証言(?)によって裁判は意外な展開を見せていく。
 狩魔検事から追い込まれながら、何とか「序審裁判」ギリギリの3日目まで調査の手を尽くした成歩堂は、キーマンは2日目に証言を済ませた灰根だと踏んだうえ、最後に灰根のウソをあばくには「サユリさん」証言しかないと判断して、オウムの証人申請をし、そこで意外な証言を得たが、さあ、それを今後の展開にどう生かす?さらに、最後の最後に成歩堂が狩魔検事に対して見せる大「逆転」劇とは?

<ゲームもいいが、現実の法廷もしっかりと!>
 私が見ても「逆転裁判」なるゲームは結構面白そうだが、ヤバイのは若者がこんな架空の法廷ゲームばかりに熱中していると、次第に現実から乖離してしまうのではないかということ。訴訟の基本の第1は「主張」と「証拠」を明確に峻別すること。そして第2は証人尋問はあくまで一問一答だから、意見と質問を明確に峻別することだ。しかし本作を観ていると、「異議あり!」のカッコ良さに紛れて(?)、この2つの基本原則がゴチャゴチャになっていると言わざるをえない。
 パチンと指を鳴らしたり、机をドンと叩くと大スクリーン上に証拠品が映し出されるのは便利だから、科学通信技術が発達すれば本作のようなシーンがホントに実現するかもしれないが、法廷バトルは所詮人間の知恵の戦いであること、そしてそこでは厳格なルールがあることをしっかり押さえておく必要がある。日本国憲法82条が「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と定めているように、法廷は常に公開されているからその傍聴は自由。したがって、ゲームもいいが、現実の法廷もしっかりと!
                                   2012(平成24)年1月17日記