洋12-24
「マリリン 7日間の恋」 ![]()
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2012(平成24)年2月17日鑑賞<角川映画試写室>
監督:サイモン・カーティス
マリリン・モンロー(ハリウッドスター)/ミシェル・ウィリアムズ
ローレンス・オリヴィエ(『王子と踊り子』の監督兼共演者)/ケネス・ブラナー
コリン・クラーク(第3助監督)/エディ・レッドメイン
ヴィヴィアン・リー(オリヴィエの妻、大女優)/ジュリア・オーモンド
アーサー・ミラー(マリリンの夫、高名な劇作家)/ダグレイ・スコット
シビル・ソーンダイク(ベテラン女優)/ジュディ・デンチ
ミルトン・グリーン(マリリンのビジネス・パートナーの男性)/ドミニク・クーパー
ルーシー(衣裳係、コリンの恋人)/エマ・ワトソン
ポーラ・ストラスバーグ(マリリンの演技コーチの女性)/ゾー・ワナメイカー
アーサー・ジェイコブ(マリリンの運転手)/トビー・ジョーンズ
オーウェン・モアスヘッド/デレク・ジャコビ
2011年・アメリカ、イギリス映画・100分
配給/角川映画
<マリリンは、名前は知っていても遠い存在?>
本作はローレンス・オリヴィエ(ケネス・ブラナー)が監督し共演する映画『王子と踊り子』の撮影のために、ハリウッドの大女優マリリン・モンロー(ミシェル・ウィリアムズ)が1956年にイギリスに渡った時の7日間の恋を描く物語。1949年生まれの私がマリリン・モンローの名前を知ったのは、中学生になり1人で3本立て55円の映画館に通うようになった時からだが、さすがに『王子と踊り子』(57年)は知らない。しかし、『紳士は金髪がお好き』(53年)、『百万長者と結婚する方法』(53年)、『帰らざる河』(54年)、『7年目の浮気』(57年)などマリリン・モンローが主演した映画のタイトルはよく知っていたし、モンロー・ウォークや1960年にはジョン・F・ケネディ大統領と不倫の関係にあったことなども、中高一貫教育の男子校にありながらよく知っていた。
しかし、それはあくまで活字や雑誌からの情報で、実際にスクリーン上でマリリンを見てそのセクシーさに参ったという経験はなかったから、マリリンはあくまで遠い存在。また、マリリン・モンローのようなセックス・シンボルよりは、ナタリー・ウッドやオードリー・ヘップバーン、さらに『隊長ブーリバ』(62年)のクリスティーネ・カウフマンのような知性派美人の方が自分の好みにピッタリ・・・?
<50年前の淡い恋(?)が、今なぜ復活を?>
マリリン・モンローが36歳の若さで死んだこと、その死が謎に包まれていることは周知の事実だから、マリリンの女優や歌手としての才能とそのスキャンダラスな生きザマ・死にザマに焦点を当てた映画も面白いと思うのだが、本作はその正反対で、マリリンが30歳の時に経験したたった7日間の淡い恋(?)の物語に焦点を当てている。
サイモン・カーティス監督が注目したのは、ローレンス・オリヴィエから『王子と踊り子』の「サード」こと第3助監督に指名された、当時23歳の若者コリン・クラーク(エディ・レッドメイン)がドキュメンタリー作家として成功を収めた後に書いたマリリンとの仕事と恋に迫った2冊の回顧録。すごい名家の血筋にもかかわらずどうしても映像関係の仕事をしたかったコリンは、押しの一手でローレンス・オリヴィエからサードの地位を獲得。そのため、『王子と踊り子』の撮影中はサード=便利屋としてマリリンの世話をすることに。撮影中は何かと気難しいローレンス・オリヴィエと衝突し、その度に演技コーチのポーラ・ストラスバーグ(ゾー・ワナメイカー)によって守られていたマリリンが、少しずつ優しくて大らかなコリンに対して心を開いていったのも当然。
他方、世紀の大スターと身近に接することになったコリンが誠心誠意マリリンに尽くしたのも当然で、それが一層マリリンの心を開かせたのも事実のようだが、果たしてそれは恋と言えるもの?現に撮影が終わると、コリンは1週間でポイと捨てられてしまったのでは・・・?そんな根本的な疑問があるものの、『ローマの休日』(53年)におけるアン王女と新聞記者との数日だって淡い恋と言えないわけではないから、まあいいか・・・。
<扱いにくい女優の典型!でもその繊細な内面は?>
日本でも「わがまま女優」「プッツン女優」と悪評のたつ女優がいつも存在するが、『王子と踊り子』の撮影風景に見るハリウッド女優マリリン・モンローはまさに扱いにくい女優の典型!役づくりや映画づくりのためには努力を惜しまず、常に合理的な思考方法で全力を尽くすローレンス・オリヴィエにとって、演技コーチのポーラ・ストラスバーグにピタリと寄り添われ、状況設定に納得できなければ役づくりができず、まともなセリフも出てこないというマリリンのような女優ははじめてだったらしい。そのうえ、遅刻や無断欠席はしょっちゅうだから、その度にローレンス・オリヴィエがイライラしたのは当然。そんな撮影風景が続く中、彼は『王子と踊り子』の完成までよく頑張ったものだ。
イギリスの名優ローレンス・オリヴィエとの共演というプレッシャーと闘いながら、それまでのセックス・シンボルから「演技派」への脱皮を目指していたマリリンの心の中が日々不安に揺れ動いていたのは当然だが、そのことと他の共演者に迷惑をかけることは全く別。私もローレンス・オリヴィエと同じでそのように考えてしまうが、もう1人の共演したベテラン女優シビル・ソーンダイク(ジュディ・デンチ)はあくまでマリリンに優しかった。日本でマリリンのような女優を挙げれば、さしずめ秋吉久美子や桃井かおりで、決して柴咲コウや沢尻エリカではないと思うが、どちらにしても扱いにくい女優であることはたしかだ。しかし、その魅力を映画の中で最大限発揮するためには、周りがすべて彼女の繊細な内心に合わせ彼女の直感的な演技を引き出すことが不可欠!
<やはり分相応が大切!本命の恋の展開は?>
コリンは若くてハンサムだから、恋人なんていくらでも・・・。現にコリンは撮影が始まるとすぐに、身持ちが固そうな(?)衣裳係のかわいい女性ルーシー(エマ・ワトソン)に対してほどよいアタック(?)をかけ、順調に交際をスタートさせていた。すると、マリリンの見張り役は仕事としてやりつつ、プライベートでは分相応なルーシーとの恋を成就させていくのがベスト。誰が見てもそう思えるし、現にマリリンのビジネス・パートナーであるミルトン・グリーン(ドミニク・クーパー)やマリリンの運転手であるアーサー・ジェイコブ(トビー・ジョーンズ)らはそのようにコリンにアドバイスしていた。ところが、ハリウッド女優マリリン・モンローではなく、一方では演技や人間関係にもだえ苦しみ、他方でコリンの前では文字どおり素っ裸になって池の中で泳ぐ子供のような心を持ったマリリンに恋をしてしまったコリンは、今やルーシーのことなど眼中になくなってしまっていた。マリリンとの2人だけの恋が進行し、その中で2人だけが共有する秘密が次々と拡大していくコリンだったが、『王子と踊り子』の撮影が終わり、マリリンがケンカ状態になっていた夫である作家のアーサー・ミラー(ダグレイ・スコット)の元に帰ることになると・・・。
コリンのそんな様子をルーシーはしっかり観察していたが、さてマリリンとの7日間の恋が終わった後、コリンはルーシーとの本命の恋をしっかり修復できるの?映画はラストにその後のマリリンの生き方の他、コリンの生き方もナレーションで語ってくれるが、ルーシーとの恋の行方については何も語らない。しかして、コリンにとって本命であったはずのルーシーとのその後の展開は?
<アカデミー賞主演女優賞の行方は?>
第84回アカデミー賞主演女優賞は、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(11年)のメリル・ストリープと本作のミシェル・ウィリアムズが激突!それに『ドラゴン・タトゥーの女』(12年)のルーニー・マーラが絡むというのが大方の予想で、大本命はメリル・ストリープ。
ミシェル・ウィリアムズは前作『ブルーバレンタイン』(10年)で演技派女優としてすさまじい夫婦ゲンカぶりを見せつけてくれた(『シネマルーム24』31頁参照)が、本作ではローレンス・オリヴィエとの確執の中で打ちひしがれるマリリンと、コリンとの淡い恋の中で自由奔放にかわいい面を見せつけるマリリンの両面をうまく演じ分けている。さらに、モンロー・ウォークの訓練はもとより、風呂場のシーンや大胆なヌードを見せる池の中のシーンの魅力もバッチリ。もっとも、そんな努力にもかかわらず、やはりサッチャー首相を演じたメリル・ストリープの存在感は圧倒的だから、賞レースはやはりメリル・ストリープの勝ち。私はそう予想したが、さてあなたは?
2012(平成24)年2月18日記