洋12-16

「昼下がり、ローマの恋」
    

                    2012(平成24)年2月2日鑑賞<角川映画試写室>

監督・原案・脚本:ジョヴァンニ・ヴェロネージ
エイドリアン(元歴史学教授、アメリカ人)/ロバート・デ・ニーロ
ビオラ(親友オーグストの娘)/モニカ・ベルッチ
ロベルト(野心的な青年弁護士)/リッカルド・スカマルチョ
ファビオ(ベテランのニュースキャスター)/カルロ・ヴェルドーネ
オーグスト(アパートの管理人、エイドリアンの親友)/ミケーレ・プラチド
ミコル(とびっきりゴージャスで挑発的な美女)/ラウラ・キアッティ
エリアナ(アパートの女性住人)/ドナテッラ・フィノッキアーロ
サラ(ロベルトの恋人)/ヴァレリア・ソラリーノ
恋のキューピット(タクシー運転手)/ヴィットリオ・エマヌエーレ
2011年・イタリア映画・126分
配給/アルシネテラン

<何とも厚かましい邦題だが・・・>
 74歳のシルビオ・ベルルスコーニ首相が女性スキャンダルを起こし辞任するほどの恋愛の国(?)イタリアでは、ジョヴァンニ・ヴェロネージ監督の『イタリア的、恋愛マニュアル』(05年)、『モニカ・ベルッチの恋愛マニュアル』(07年)が大ヒットしたらしい。本作はその第3弾となるもので、原題も『Manuale d’amore3』(恋愛マニュアル3)。イタリアの恋愛映画に「イタリアの宝石」モニカ・ベルッチが登場するのは当然だが、そのお相手として年齢的にアンバランスなハリウッド俳優ロバート・デ・ニーロが登場したことにビックリ。もっとも、イタリア人の父親を持つアメリカ人のロバート・デ・ニーロは、イタリア語もお手のものらしい。本作は、「若者の恋」、「熟年の恋」、「老いらくの恋」という3つの男女の恋愛物語から成り立っているが、この2人の大スターを1/3の比率で登場させるという贅沢なことができたのは、『恋愛マニュアル』1、2が大ヒットしたおかげ?
 目を転じて、『昼下がり、ローマの恋』という邦題をみれば、誰だってゲイリー・クーパーとオードリー・ヘップバーンが共演した『昼下がりの情事』(57年)とヘップバーンの代表作『ローマの休日』(53年)を思い出すはずだから、その両者の組み合わせはいかにも贅沢で厚かましい。『昼下がりの情事』も『ローマの休日』もちょっとせつないロマンスだった(?)が、そんな両者を組み合わせた厚かましい邦題の本作に見る3つの恋の物語とは?

<第1話「若者の恋」、若者は火遊びをしてはじめて・・・>
 ジョヴァンニ・ヴェロネージ監督が3つの物語共通の舞台として設定したのは、中年男のオーグスト(ミケーレ・プラチド)が管理しているアパート。第1話の「若者の恋」は、そのアパートに暮らす女性サラ(ヴァレリア・ソラリーノ)と、彼女との結婚を夢見ながら野心的に弁護士としての活動に奔走するロベルト(リッカルド・スカマルチヨ)の物語だ。トスカーナ地方の小さな村に立ち退き交渉のために出張したロベルトは、そこでとびっきりの美女ミコル(ラウラ・キアッティ)と出会い、心が躍るが、実はミコルは・・・?
 イタリア人男は女好きでプレイボーイというのはある意味常識だが、ミコルを見ていると女だってなかなか・・・。サラへの想いに悩みながら少しずつミコルの魅力に引きずり込まれ、その強引な誘いによって遂にベッドイン。その状況に至ったところで、実はミコルには大金持ちの夫がいたことが判明したからご愛嬌だ。互いに惚れ合ってそのまま一直線で結婚にゴールインというのも悪くはないが、特に女好きが多いイタリア人男性の場合は、若いうちにロベルトのように火遊びをしてそれに懲りておけば本命サラの価値が余計大きくなるうえ、2度と火遊びはしないぞ、という教訓になるのでは?

<第2話「熟年の恋」、熟年の火遊びは命取り・・・>
 第2話の「熟年の恋」は、ベテランのニュースキャスターであるファビオ(カルロ・ヴェルドーネ)が、アパートの住人エリアナ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)に誘惑され、最悪の事態を迎えていくというヤバイ恋の物語。私が「エキセントリック」という形容詞をはじめて知ったのは、中学生の頃に吉行淳之介の『砂の上の植物群』という小説を読み、かつ仲谷昇と西尾三枝子が共演した映画『砂の上の植物群』(64年)を観た時。中学生にはかなり刺激の強いエッチな物語だったが、なるほどエキセントリックな女とはこういう女性をいうのかと妙に納得したことを覚えている。
 第2話に見る女性エリアナは当初こそ少しエキセントリックで魅力的な女性だったが、ストーカーまがい、いやストーカーそのものの本性を見せてくると、徐々に恐くなってくる。さらに、それが彼女のエキセントリックな性格によるものだけではなく、ホンモノの精神病患者だとわかるレベルまで来ると、ファビオの方は妻や娘に出て行かれただけではなく、仕事もクビにされ・・・。若者ロベルトの場合はゴージャスな美女ミコルとの火遊びも教訓で終わることができたが、ファビオほどの熟年になるといくら美女でもエリアナのようなエキセントリックな女との火遊びは命取りに・・・。

<第3話「老いらくの恋」、2人の出会いは?>
 第3話の「老いらくの恋」は、2年前の定年を機にアメリカからイタリア・ローマのオーグストのアパートに移り住んできた元ボストン大学の教授エイドリアン(ロバート・デ・ニーロ)が、オーグストの娘であるビオラ(モニカ・ベルッチ)との恋に燃え上がるものだが、その最後はハッピーエンド・・・?それとも・・・?私が思うに、第1話と第2話に登場するミコラとエリアナはどう見ても悪女だが、いくらジョヴァンニ・ヴェロネージ監督でもさすがに「イタリアの宝石」モニカ・ベルッチは悪女にできなかったようだ。
 7年前に心臓移植の大手術を受け、それが原因で夫婦仲がこじれ離婚に至ったエイドリアンは今でも結構いい男。したがって、ローマに移り住んでからもいろいろな女性の誘惑があったようだが、文字どおり恋心で胸を焦がすと心臓に悪いからと誘惑をはねつけ自制していたらしい。ところが、久しぶりにアパートに戻ってきたオーグスト自慢の娘ビオラと話を交わしていくと次第に・・・。

<第3話「老いらくの恋」、急展開は?>
 心臓の爆弾を気にして感情的になることを抑えていたエイドリアンだが、ある日オーグストから激怒され勘当されてしまったビオラがエイドリアンの部屋を訪れてくると・・・。ベトナム戦争が共通項で親友となったエイドリアンがオーグストから聞いていた話では、ビオラはパリの有名ブランドに勤務するキャリアウーマンということだったが、実はそれは真っ赤なウソ。ビオラはパリでストリッパーをしていたうえ、今は借金取りからの追及を逃れて実家に戻ってきたらしい。そんな事情はわかっていても、いざビオラのような魅力的な女性が自分の部屋の中に転がり込んでくると、つい老いらくの恋が・・・。
 もちろん、これは父親のオーグストには内緒だが、親友のオーグストはしょっちゅうエイドリアンの部屋を訪れていたから2人の老いらくの恋がバレるのは時間の問題・・・。

<第3話「老いらくの恋」、ラストは何でもあり!>
 日本では加山雄三の父親・上原謙が71歳で子供が授かったことが話題になったが、この場合子供が20歳になる頃父親は91歳。また百姓から太閤まで上りつめた豊臣秀吉は57歳にして茶々との間に秀頼を授かったが、5歳の秀頼を残して62歳で死んでいった秀吉は、さぞかし心残りだったはずだ。心臓疾患を抱えているエイドリアンは恋愛的感情が浮上するのを抑えていたが、ベッドインしてビオラのようなセクシーな女性といざコトに及ぶとなると、心臓への負担は大丈夫?冷静に考えるとそれが心配だが、ある日2人が素っ裸のままベッドインしている姿をオーグストに見つかったエイドリアンはそこですごすごと謝るのではなく、全く逆の行動を。すなわち、男の人生を豊かにするのは女性への愛。いくら心臓疾患を抱えていても、いくら年齢差があっても、いくら親友の娘であっても、ビオラに対する自分の気持に正直に生きていくことが自分の残りの人生を豊かにすることだ。そう覚ったエイドリアンは、もはや地位もいらない、研究もいらない、ビオラさえ傍にいればいいという大決心をしたから偉い。
 第2話「熟年の恋」は哀しさでいっぱいだったが、打って変わって第3話「老いらくの恋」は想像以上のハッピーエンド。しかして、上原謙や太閤秀吉が果たせなかった夢のように、腕の中に今赤ん坊を抱えているエイドリアンの姿を見ていると、まさに「老いらくの恋」のラストは何でもあり!『恋愛マニュアル』シリーズを大ヒットさせたジョヴァンニ・ヴェロネージ監督だけに、彼が描く恋の物語は一筋縄ではいかない、奥の深いものばかりだ。
                                  2012(平成24)年2月13日記