洋11-64 

「マイティ・ソー」
    

                    2011(平成23)年6月1日鑑賞<GAGA試写室>

監督:ケネス・ブラナー
マイティ・ソー(アスガルド最強の戦士)/クロス・ヘムズワース
ジェーン・フォスター(天文学者)/ナタリー・ポートマン
ロキ(アスガルドの邪神、ソーの弟)/トム・ヒドルストン
セルヴィグ教授(天文学の研究者)/ステラン・スカルスガルド
ラウフェイ(氷の王国ヨトゥンヘイムの支配者)/コルム・フィオール
ヴォルスタッグ(ソーに仕える三銃士の1人)/レイ・スティーヴンソン
ヘイムダル(アスガルドの神)/イドリス・エルバ
ダーシー(ジェーンが勤める研究施設のインターン)/カット・デニングス
オーディン(神々の世界アスガルドの王)/アンソニー・ホプキンス
ホーガン(ソーに仕える三銃士の1人)/浅野忠信
シフ(アスガルドの女戦士)/ジェイミー・アレクサンダー
フリッガ(ソーとロキの母)/レネ・ルッソ
ファンドラル(ソーに仕える三銃士の1人)/ジョシュア・ダラス
2011年・アメリカ映画・115分
配給/パラマウント ピクチャーズ ジャパン

<新たなマーベル・コミックのヒーロー像は?>
 
私が観ただけでも、『スパイダーマン2』(04年)(『シネマルーム6』14頁参照)、『スパイダーマン3』(07年)(『シネマルーム14』222頁参照)、『アイアンマン』(08年)(『シネマルーム20』22頁参照)、『アイアンマン2』(10年)、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(06年)(『シネマルーム11』404頁参照)などアメリカのマーべルコミックは次々とエンタメ巨編をつくり出してきたが、何とシェークスピアもので有名な(?)ケネス・ブラナー監督が挑戦したのは、原作コミック『Thor』の映画化。もちろん、私はその内容を全く知らなかったが、その主人公たるマイティ・ソーは神の世界アスガルドの王子にして最強の戦士の名前だ。
 映画冒頭、長男のソー(クロス・ヘムズワース)がアスガルドの国を治める王オーディン(アンソニー・ホプキンス)から王位を継承する華々しい儀式の様子が描かれる。弟ロキ(トム・ヒドルストン)との王位継承レースに勝利したわけだが、その宣言がされようとする直前にラウフェイ(コルム・フィオール)が支配する「氷の王国」からの侵入者が発見されたため、儀式は中止。これに怒ったソーは、ソーを護衛する三銃士のヴォルスタッグ(レイ・スティーヴンソン)、ホーガン(浅野忠信)、ファンドラル(ジョシュア・ダラス)らを伴って、氷の国へ乗り込み、若さにまかせて大暴れをしたが・・・。

<地球との接点はどこに?>
 
本作は、神の国アスガルドと地球、そして氷の王国を宇宙的規模で結ぶ壮大でド派手なアクションが1つの「売り」だが、ケネス・ブラナー監督が本作で本当に描こうとしたのは王位継承者たる若者マイティ・ソーの成長物語だ。映画冒頭、自信たっぷりの表情で登場し、氷の王国へ乗り込み、華々しい活躍を見せるものの、所詮それは蛮勇?
 それを王から指摘されるとソーは逆切れしてしまったから、ついに王はソーを追放してしまった。さらに、「選ばれたもの」しか持つ事のできない伝説の武器「ムジョルニア」も放り捨ててしまったから、大変。もっとも、ソー追放というストーリーによって、映画冒頭に登場するナタリー・ポートマン扮する女性科学者ジェーン・フォスターやセルヴィグ教授(ステラン・スカルスガルド)とマイティ・ソーとの接点が地球上で生まれることに。異国なのになぜ言葉が通じるのか不思議だが、映画は何でもあり。ちょっと風変わりだが筋骨たくましくてやさしく結構いい男のソーと、優秀な女性科学者ジェーンとの間には、当然のように恋模様が・・・。

<長男がダメなら次男だが・・・。その適正は?>
 2人兄弟の場合、長男が陰険型で、
次男が陽気型。相場はそう決まっている(?)が、本作では顔つきも行動も全く逆。すなわち、長男のソーは直情型であるのに対し、次男のロキは思慮深く控えめだが、口が達者で陰謀をめぐらすタイプらしい。本作は有名なギリシャ神話やローマ神話ではなく、ある1つの「北欧神話」がストーリーの底を流れている。それはそれとしてじっくり勉強したいが、後半に至ってロキの出生をめぐる「あっと驚く事実」が判明するのでそれに注目!
 オーディン王にとって長男のソーを追放した今、王位継承者は次男のロキしかいないはずだが、さてロキの王位継承者としての適正は?現在保たれている氷の王国との平和はオーディン王が大所高所から締結した「平和協定」にもとづくものだが、王が死亡した後に王位を継いだロキが、氷の王国と結託して両世界の支配をもくろんだら?物語が進むにつれて次第にロキがそんな陰険なタイプであることが明らかになっていくが、そんな中、地球上で不遇をかこうソーの再生と復活は?

<若者はやはり千尋の谷に落とさなければ・・・>
 ソーを護衛するヴォルスタッグたち三銃士がソーを救出すべく地球に降り立つあたりから、本作はいかにもマーベル・コミックらしいエンタメ巨編ぶりが顕著になってくる。したがって、後半は頭を空っぽにして、ソーと三銃士の友情物語や王の涙の中でやっとあの武器ムジョルニアを手に入れ、神の国アスガルドの最強の戦士らしい勇姿に復活したソーの目覚ましい活躍ぶりを楽しみたい。
 最後に交わされる父と息子の会話を聞けば、ソーの急成長ぶりは明らかだ。「獅子は我が子を千尋の谷へ突き落とす」ということわざのとおり、やはり王位を継承しようとする者はこれくらいの試練を経て成長しなければ・・・。
                               2011(平成23)年6月4日記