洋11-57
「ロシアン・ルーレット」 ![]()
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2011(平成23)年5月23日鑑賞<GAGA試写室>
監督・脚本:ゲラ・バブルアニ
ヴィンス・フェロー(病気の父を抱えた青年)/サム・ライリー
ジャスパー・バッジェス(謎の男)/ジェイソン・ステイサム
パトリック・ジェファーソン(囚人)/ミッキー・ローク
ロナルド・リン・バッジェス(死に瀕した、ジャスパーの兄)/レイ・ウィンストン
ヘンリー(ゲームの進行係)/マイケル・シャノン
ジミー/カーティス・“50Cent”ジャクソン
アイリーン/エマニュエル・シュリーキー
2010年・アメリカ映画・97分
配給/プレシディオ
<あの問題作が、ハリウッドでリメイク!>
近時ホントに面白い映画ネタが貧しくなったためか、ハリウッドでは特にリメイクが花盛り。「勝率1%!17人のロシアン・ルーレット!」を「売り文句」としたハリウッド映画の本作は、1975年にグルジア系フランス人として生まれたゲラ・バブルアニ監督の初監督長編作である『13/ザメッティ』(05年)のハリウッドでのリメイク版。
『13/ザメッティ』は05年度ベネチア国際映画祭の最優秀新人監督賞等を受賞した映画で、予告編をみて「こりゃ必見!」と思って映画館に行った作品。映画としては、たしかに面白かったが、私が指摘したのはルールについての疑問その1、その2、その3だった(『シネマルーム14』388頁参照)。しかして、さて本作は?
<たしかに個性派スターを集めたが・・・>
『13/ザメッティ』で主演したゲラ・バブルアニ監督の実弟であるギオルギ・バブルアニを、私は『太陽の季節』(56年)で俳優デビューしたズブの素人だった石原裕次郎と対比したが、ハリウッドのリメイク版たる本作で主役となる若者ヴィンス・フェロー役に抜擢されたのはサム・ライリー。電気工の仕事をしながら病気の父親を養わなければならないヴィンスは、仕事場として入っていたあるお屋敷で、耳寄りな情報を聞きつけた。そして、こりゃひょっとして1日にして大金を手に入れるチャンス、と興味津々。世の中そんなウマイ話はありえないのだが、『太陽の季節』と同じように、社会的経験が未熟な若者の場合は?
本作は97分とコンパクトだが、前半約30分は「ある館」で開催される「勝率1%!17人のロシアン・ルーレット!」への参加者がエントリーされる様子が描かれる。ヴィンスはたまたま常時参加していた(?)あのお屋敷のご主人が突然死亡したため、勝手にその身代わりとして名乗り出ただけだが、17人のロシアン・ルーレットの参加者は当然ながらクセ者ぞろい。まずは、『ミニミニ大作戦』(03年)や『トランスポーター』シリーズ、さらに『アドレナリン』シリーズで有名なジェイソン・ステイサムが、本来のアクションを封印し、病身の兄ロナルド・リン・バッジェス(レイ・ウィンストン)を出場させて自らはカネを稼ぐクセの強いディーラー役として登場する。また、アカデミー賞主演男優賞は逸したものの、『レスラー』(08年)が2008年度ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したミッキー・ロークが、囚人から無理やりにエントリーされるパトリック・ジェファーソン役として登場する。このように、本作ではたしかに一瞬の勝負に挑む男たちに個性派スターを集めたが・・・。
<「ルールについての疑問」の反省は?>
本作を観てがっかりしたのは、前述のようにせっかく私がルールについての疑問その1、その2、その3を指摘したのに、ゲラ・バブルアニ監督にはその反省が全くなく(?)、同じルールでロシアン・ルーレットのゲームを進めていること。『シネマルーム14』で私が指摘したルールについての疑問は、①1回戦で全員が死んでしまったら?②最後に残った4人でくじ引きをやるのは如何?③引き金を引くタイミングを一致させるのは難しい、ということ。つまり人間が命をかけたゲームをやるについては、万人が納得できるルールを定める必要があるのでは?ということだ。
デジタル技術は日々進化しているのだから、今ドキ電灯がついたら引き金を引くなどという古典的なやり方に固執するのではなく、全員のピストルの引き金が同時に自動的に引かれるとした方が合理的なのでは?もっとも、そうなると人間は引き金を引くという緊張感からは解放され、実弾で撃たれるかもしれないという緊張感だけになってしまうが、それでも恐怖感から先に引き金を引いてしまうという取り返しのつかないルール違反はなくなるはずだ。
<私の疑問が、こんなシーンで露呈?>
私が指摘するルール上の疑問がもろに露呈したのが、3回戦を突破した5人のうち、抽選で決闘することになったヴィンスとロナルドの対決。6発の弾倉に3発の実弾をこめたピストルを向け合った決め手で互いのピストルが不発となったのは互いにラッキーだった。ところが、死刑でも1度執行して失敗したら2度と執行されないのに、過酷なロシアン・ルーレットではディーラーたちの勝ち負けを決めるため引き分けはなく、ルール上再試合になるらしいから大変。そこでは明らかにロナルドの方が先に引き金を引いた音がしたが、結果はあとから引いたヴィンスのピストルに実弾が入っていたため、ヴィンスの勝利。
もちろん、世の中は何でも結果オーライだからヴィンスはこれでいいのだが、もし逆にロナルドのピストルに弾が入っていたとすれば・・・。
<獲得賞金はハウマッチ?その後の安全保証は?>
バクチ系でもH系でも、この手のゲームはすべて法律違反。したがって一攫千金を夢見てゲームに参加しようとしているヴィンスを警察が追ったのは当然だがヴィンスはうまくそれをすり抜けることに。そして、ゲームは粛々と実施され、その当否はともかく結果的にゲーム イズ オーバーに。しかして、最後の決闘に及んだジャスパーの兄ロナルドに勝ったヴィンスの獲得賞金はハウマッチ?
それは何と185万ドルという巨額なものだった。しかしこれはあくまで違法ゲームでの獲得賞金だから、いかにこれをまともな資金として父親の入院費用に回すことができるかという問題が残っている。つまり、裏金を稼ぐのは一定の能力(運?)があれば可能だが、それ以上に難しいのは、稼いだ裏金をいかにして表金に浄化させるかということだ。しかも、獲得賞金を安全に故郷まで持ち帰ることができるという保証は、一体どこに?
<「ゲーム イズ オーバー」後のストーリーは?>
本作は中盤に展開される勝負の緊張感がメイン。たしかにそれは面白く引きつけられるが、逆にそれが予想どおりヴィンスの勝利に終わると、今度は映画としてのストーリーをいかにつなぐかが問題となる。もちろん、ヴィンスがゲームの賞金を無事に故郷に持ち帰ることができればすべてオーケーだが、世の中には勝者をねたむ敗者がいるのは当たり前。秘密の館で開催された秘密のロシアン・ルーレットはすべて非合法だから、賞金獲得者を暗殺して、その獲得賞金を奪うのもオーケー?そんなバカみたいなルールではこのゲームが何年も続くはずがないと思うのだが、本作ラストに向けての展開を見ていると、このゲームの統制はどうなっているの?と思わざるをえない。つまり、非合法は非合法で仕方ないのだが、それならそれなりの徹底したルールを決めて勝者と敗者を区別しなければダメということだ。さらにゲーム終了後にやっとヴィンスを逮捕(?)した警察の取調べ方や、ヴィンスを追うジャスパーたちの行動を見ていると頭の悪さが目立ったが、ひょっとしてそれは私だけ・・・?
ヴィンスはヴィンスなりに懸命の用心をしながら、命がけで獲得した185万ドルを故郷まで持ち帰ろうとしたが、さてその実現は?
2011(平成23)年5月24日記