洋11-38
「処刑剣 14BLADES」 ![]()
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2011(平成23)年3月23日鑑賞<東映試写室>
監督:李仁港(ダニエル・リー)
青龍(チンロン)(錦衣衛のリーダー)/甄子丹(ドニー・イェン)
喬花(チャオ・ホア)(ヨンの娘)/趙薇(ヴィッキー・チャオ)
喬永(チャオ・ヨン)(運送屋「正義護送屋」の長)/牛馬(ウー・マ)
天鷹幇(テンオウホウ)(盗賊団リーダー“砂漠の判事”)/呉尊(ウーズン)
脱脱(トゥオトゥオ)(チン親王の養女)/徐子珊(ケイト・ツイ)
玄武(錦衣衛の副官)/戚玉武(チー・ユーウー)
チン親王(現皇帝の叔父)/洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
賈精忠(ジア)(朝廷最高位の宦官)/羅家英(ロー・ガーイン)
2010年・中国映画・113分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<キムチ・ウエスタンVSチャイニーズ・ウエスタン!>
韓国を代表するソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ウソンの3人が、かつて三船敏郎、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンという世界的俳優3人が結集した『レッド・サン』(71年)のように楽しく激突した韓国映画が『グッド・バッド・ウィアード』(08年)だった(『シネマルーム23』122頁参照)。韓国がそんなキムチ・ウエスタンで勝負するなら、中国は甄子丹(ドニー・イェン)と趙薇(ヴィッキー・チャオ)、そして呉尊(ウーズン)と徐子珊(ケイト・ツイ)が激突する(?)チャイニーズ・ウエスタンで勝負!とはいってもこちらは明の時代の物語だから、三池崇史監督の無国籍映画『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07年)のように早撃ちの勝負ではなく、あくまで剣の勝負。しかし、荒野(砂漠)の中を馬で疾走するシーンの続出はまさにチャイニーズ・ウエスタンそのものだ。
劉德華(アンディ・ラウ)を主人公に迎え、若き日の趙雲を主人公にした李仁港(ダニエル・リー)監督の『三国志』(08年)は、呉宇森(ジョン・ウー)監督の『レッドクリフpartⅠ』(08年)(『シネマルーム21』34頁参照)とは全く雰囲気が違う異色作で、私には非常に面白かった(『シネマルーム22』184頁参照)。本作もその李仁港監督作品だから、主人公が劉德華から甄子丹に変わっても作品のテイストは全く同じ。出番は少ないながらも香港出身の重鎮、洪金寶(サモ・ハン・キンポー)がチン親王としてストーリーの鍵を握るのも、全く同じだ。さあ、全ての理屈抜きで、李仁港監督が描くチャイニーズ・ウエスタンの醍醐味を堪能しよう。
<勉強のネタもタップリ!>
本作の原題は『錦衣衛(きんいえい)』。英題は『14 BLADES』。邦題は『処刑剣』。しかし、このどれをみても日本人は誰も本作のテーマやイメージを描くことはできないだろう。それは既にGDPで日本を追い越して世界第2位になった中国でも同じだとみえて、本作冒頭では①錦衣衛(きんいえい)、②大明十四刀、③青龍等についての重々しいナレーションが展開される。今年3月末で中国語の勉強が丸2年となる私なら、説明を聞けばこれらの言葉の意味や中国語の発音も理解できるが、中国通でないあなたにはやはり難しいかも?したがって、本作を楽しむには最低限このナレーションを聞きもらさないことが大切だ。
また韓国ドラマ『太王四神記』によって青龍、朱雀、白虎、玄武が有名になったが、本作において甄子丹扮する青龍と青龍を裏切った錦衣衛の副官の玄武(戚玉武)との関係は?さらに、本作にはいくら商売を続けても儲からないという現状のために解散寸前となっている「正義護送屋」と名乗る「鏢局(ひょうきょく)」が登場するが、さてこれは何?『レッドクリフPartⅠ』(08年)、『レッドクリフPartⅡ』(09年)(『シネマルーム22』178頁参照)の尚香役で大活躍した中国四大女優の一人、趙薇はその局長・喬永(牛馬/ウー・マ)の娘・喬花だが、なぜそんな喬花と錦衣衛のリーダーたる青龍が波瀾万丈の冒険活劇をくり広げることに?さあ、本作は娯楽作品として楽しめばそれだけでも十分だが、他方で勉強のネタもタップリ!
<「玉璽(ぎょくじ)」の意義もしっかりと!>
本作の時代設定は、中国、明の時代。錦衣衛は明朝の初代皇帝たる朱元璋が創設した実在の秘密警察。仙谷由人氏は官房長官在任中に自衛隊を「暴力装置」と発言したため問責決議を受ける羽目になったが、錦衣衛はまさにその「暴力装置」だからその使い方が難しい。しかして、その活用(悪用?)を図ったのが、政権の転覆を狙っている現皇帝の叔父・チン親王と朝廷最高位の宦官・ジアの2人だ。本作の導入部分では、そんな大人たちの権力闘争に巻き込まれ、裏切り者の烙印を押されてしまう青龍のストーリーを楽しみたい。
そこでのポイントは玉璽。玉璽とは皇帝が用いる印章のことだから、その威力は絶対的。錦衣衛のリーダーたる青龍が宦官のジアから命じられたのは、帝が重臣・ジャオに与えた箱を奪い取れというものだったが、その箱の中に入っているものこそが玉璽なのだ。ちなみに、織田信長の花押は麟の字、秀吉は悉の字。そして、伊達政宗の花押は鳥(セキレイ)だが、秀吉に対する一揆煽動の手紙にセキレイの花押があったから大変。もっとも、その窮地をそれは偽物だという政宗の巧みな弁明によって切り抜けたのは有名なお話。そんな絶大な力をもつ玉璽をめぐる争いにおいて、暴力装置の指揮官たる青龍の役割は重大だ。もし、まちがった命令に従って暴力装置が動いた場合は?
たかが判子というなかれ!我々の日常生活でも実印登録と印鑑証明書の活用が不可欠だが、皇帝の権力の行使にはまさに玉璽が不可欠なのだ。そんな玉璽の意義をしっかり理解しておかなければ、本作中盤から後半にかけて展開される青龍の生命をかけた玉璽取戻し作戦の意味がわからなくなってしまうかも。
<オリジナリティあふれるアクションを楽しもう!>
甄子丹が中国香港を代表するアクション俳優であることは誰でも知っているが、本作で注目したいのはチン親王の養女である脱脱(トゥオトゥオ)。このトゥオトゥオを演ずるのは、『天使の眼、野獣の街』(07年)で私が注目したミス香港出身の女優・徐子珊(ケイト・ツイ)だ。本作では、彼女が駆使する西域生まれの魔術的な技に注目!錦衣衛の副官である玄武の裏切りによって捕虜になった白虎たちを翻弄するその技は、魔術的というよりも幻想的かつ妖艶。台湾を代表するアイドル・ユニット「飛輪海」の人気者だという呉尊が扮する砂漠の判事・天鷹幇(テンオウホウ)との一騎討ちでも彼女が見事に勝利を収めるから、最後の青龍との対決に期待が高まるのは当然だ。
西域の女らしく口もとをターバンで覆っているのもかえって色気があるが、なぜか迫真の対決シーンでは1枚ずつ着物を脱いでいき、時には片肌を脱ぐ(?)ところまでいきそうになるからそれにも注目!錦衣衛の指揮官だけが持つことができる大明十四刀を背負っている青龍は、それをいかに活用して魔術的な技を使う脱脱に立ち向かうの?ちなみに、柄に「奉天成仁」と彫られた14本目の剣は、任務を果たせなかったときに自決するためのものらしいが、さて青龍はそれを使うことになるの?さあ、ワイヤー技を駆使したオリジナリティあふれるアクションを楽しもう。
2011(平成23)年3月28日記