洋11-19 (ショートコメント)

「ヤコブへの手紙」
    

                    2011(平成23)年2月11日鑑賞<テアトル梅田>

監督・脚本:クラウス・ハロ
レイラ/カリーナ・ハザード
ヤコブ牧師/ヘイッキ・ノウシアイネン
郵便配達員/ユッカ・ケイノネン
刑務所長/エスコ・ロイネ
2009年・フィンランド映画・75分
配給/アルシネテラン

 フィンランドは人口530万人の小さな国だが、その96%が国教であるルター派に属しているらしい。日本では「日本福音ルーテル教会」として活動しているルター派そのものを、宗教心の薄い日本人はほとんど知らない。しかしそんな国フィンランドなればこそ、盲目の牧師ヤコブ(ヘイッキ・ノウシアイネン)とひょんなきっかけでそこで働くことになった女性レイラ(カリーナ・ハザード)の2人をストーリーの軸とし、「ヤコブへの手紙」をテーマとしたこんな心温まる映画が。
 わずか75分の映画だが、第82回アカデミー賞外国語映画賞フィンランド代表に選ばれたうえ、第66回フィンランド・アカデミー賞で最多受賞したというから、立派なもの。ド派手なハリウッド映画も悪くはないが、たまにはこんなしっとりとした映画も。

 模範囚だったため恩赦によって12年ぶりにシャバに出てきたレイラはヤコブ牧師の家で働くことになったが、その仕事は目の見えないヤコブ牧師に代わって手紙を読んでやることと返事の代筆をしてやること。牧師はある意味で人間の悩みを聞くことが仕事だから、悩み相談で送られてくる手紙はかなり多いらしい。そして、それを読み1人1人丁寧に回答を書いてやることがヤコブ牧師の楽しみであり、生きがいらしい。ところが、終身刑だったはずのレイラが牧師の家で住み込み始めると、郵便配達員(ユッカ・ケイノネン)がいつも配達してきた手紙が時として配達されなくなることも。「そりゃ来ない日もあるさ」とヤコブ牧師は納得したものの、配達のない日が続くと・・・。
 何でも説明してくれるテレビドラマの延長のような邦画と違って名作は説明が少ないから、そこらあたりの事情はわかりにくいが、なぜレイラが住み込み始めてから手紙(の配達)が少なくなったの?そして、そんな状況下で生まれたレイラと郵便配達員のある計画とは?

 パンフレットによると、本作は全く無名の脚本家から
クラウス・ハロ監督に送られてきた1通のメールから生まれたらしい。ケータイが普及した今、特に若者たちは何でもメールで話してしまうから、手紙を書く習慣自体がなくなっている。しかし、手紙には文章(の乱れ)や筆跡に人間の気持がにじみでるもの。1976年のヒット曲である因幡晃の名曲『わかって下さい』のテーマは手紙、涙、秋で、「涙で文字がにじんでいたなら、わかって下さい」という歌詞が心に染みたものだ。
 何とも無愛想で人生に開き直ったようなおばさん(?)レイラが、終身刑を言い渡された女性だったということが本作のストーリー展開に重みをもたせてくれている。結婚式の時に神父が新郎新婦に読んでやる聖書の一節は誰でもよく知っているが、聖書にはそれ以外にもさまざまな人間に対するメッセージがある。罪や贖罪そして魂やその救済というテーマは日本人には少し苦手だが、たまにはそんな視点から人間にアプローチしてみては・・・。
                               2011(平成23)年2月12日記