洋11-131

「ハンター」
    

                   2011(平成23)年12月22日鑑賞<角川映画試写室>

監督:ダニエル・ネットハイム
原作:ジュリア・リー『THE HUNTER』
マーティン・デイビッド(百戦錬磨の傭兵、凄腕のハンター)/ウィレム・デフォー
ルーシー(サスとバイクの母親)/フランシス・オコナー
ジャック・ミンディ(現地ガイド)/サム・ニール
サス(ルーシーとジャラの娘)/モルガナ・デイヴィス
バイク(ルーシーとジャラの息子、サスの弟)/フィン・ウッドロック
ライバル・ハンター/カラン・マルヴェイ
ジャラ(動物学者、サスとバイクの父親)/マーク・ワトソン=ポール
2011年・オーストラリア映画・100分
配給/ブロードメディア・スタジオ

<広い世界にはこんな物語も!>
 BS放送のドキュメンタリー番組ではよく世界の秘境を訪ね歩く旅が放映されているが、そういう番組を観る時間のない私には、①オーストラリア本土の南に位置するタスマニア島が、ユネスコの世界遺産に登録された原生地域が広がる自然の宝庫であること、また②独特の生態系を持つこの島には希少価値の高い動・植物が数多く棲息し、世界中の観光客を魅了してやまないこと、を全く知らなかった。ジュリア・リーの『THE HUNTER』を原作とする本作は、既に絶滅したとされるタスマニアタイガーの生き残りがタスマニア島にいるとの情報をもとに、その捕獲に乗り出す孤高のハンターの物語だ。
 もっとも、それだけならドキュメンタリー番組だが、百戦錬磨の傭兵にして凄腕のハンターであるマーティン・デイビッド(ウィレム・デフォー)にタスマニアタイガーを見つけ出し、その生体サンプルの採取を依頼したレッドリーフ社の狙いがあっと驚くものだった、というのが本作のミソ。なるほど、広い世界にはこんな物語も!

<弁護士と比較してのハンターの職業倫理は?報酬は?>
 戦後66年間も平和を享受してきた日本ではマーティンのような人物は存在しえないが、世界にはなおフリーランスの傭兵として世界中を渡り歩くハンターがいるらしい。弁護士は法律のプロとして依頼者からの依頼を受けて委任事務を処理して報酬をもらうが、どんな依頼でも受任するわけではない。弁護士は極悪非道な刑事被告人の弁護を引き受けることもあるが、それはそれなりの職業倫理に沿ったものだし、受領する報酬だって実践する弁護士業務のボリュームと成果に見合う適切なものでなければならないのは当然だ。しかし、それと比較しての、本作に見るマーティンの職業倫理は?
 レッドリーフ社がマーティンにタスマニアタイガーの捕獲を依頼したのは、一体何のため?彼がそのことに全く興味を示さないところが、まず私には不満。もし、その依頼の実行が悪事に加担するものであれば、一体どうするの?次に、マーティンの報酬はきっと弁護士と同じように着手金と実費そして成功報酬の3本立てだろうが、その金額がはっきり示されないのが私には不満。命の危険を伴う任務だから相当な金額のはずだが、それくらい教えてくれてもいいのでは・・・?

<本作に見る、生きる権利VSエコロジーは?>
 現地ガイドのジャック・ミンディ(サム・ニール)がマーティンのために用意したベースキャンプは森の中にある木造の民家で、そこには動物学者で環境保護活動に熱心な父親ジャラ(マーク・ワトソン=ポール)とその家族が住んでいた。しかし、数カ月前森に入ったジャラは消息を絶っていたため、今この家には幼くて利発な少女サス(モルガナ・デイヴィス)と、言葉を全く発しない弟バイク(フィン・ウッドロック)、そして体調不良で寝たきりの母親ルーシー(フランシス・オコナー)が住んでいた。
 壊れた発電機の修理ができないためお湯も出ないこんな家では、とてもじゃないが仕事に集中できない。そう考えたマーティンは町のバーに立ち寄って泊まれる部屋を物色したが、森林伐採を正業とする地元の労働者たちが集まるこのバーでは、非合法ハンターの素性を隠し、大学から派遣された研究者を装っているマーティンは、ジャラと同じようなエコロジー論者とみなされて仲間はずれに。なるほど、観光客にはタスマニア島の自然は貴重な価値だが、そんな環境の保護と生きる権利の両立はここでも難しい問題だ。

<注目はハンターとタイガーとの知能戦のはず?>
 テレビの釣り番組では、海釣りでも川釣りでもどんな位置で、どんな釣具とどんな仕掛けで、何を狙って、と詳しく解説してくれる。しかしマーティンの場合は、ホントにいるのかどうかすらわからない幻の動物タスマニアタイガーの捕獲を、広い森の中でたった1人でやろうとしているのだから大変。そこで本作中盤の注目点は、マーティンがどこにどんな仕掛けをし、何を狙っているのかという対タスマニアタイガーとの知能戦になる。もっとも、本作後半では、そんなマーティンとタスマニアタイガーとの知能戦の外で突然銃弾がこだましたり、マーティンからの報告が遅れ気味なことに業を煮やした(?)レッドリーフ社がライバルハンター(カラン・マルヴェイ)を送り込んだりしてくるから、話はややこしくなってくる。
 私に言わせれば、そんな混乱の原因はすべてマーティンとレッドリーフ社との間の委任契約(?)の内容が不明確なためだから、ある意味マーティンの自業自得?とりわけ、専門家としての仕事のやり方について依頼者からとやかく言われると対立が生まれるものだが、現地ガイドのジャック・ミンディの動きは最初から少しヘン・・・。その結果、マーティンがタスマニアタイガーと対決する前にライバルハンターと対決するシーンが登場することになるが、それって一体なぜ?さらに、自分の位置がライバルハンターにバレたのは誰か密通者がいるに違いない。そう睨んだマーティンがジャラの家に戻ってみると・・・。

<なるほど、この結末に納得!>
 思いがけない後半の展開を経て、ストーリーはついにクライマックスに突入していくが、パソコンの画面上で見ただけのタスマニアタイガーはホントにタスマニア島にいるの?マーティンがタスマニアタイガーに近づくことができたのは、第1に口の聞けない弟バイクが書いた絵。タスマニアタイガーの周りに青く塗られたたくさんの丸いものは一体ナニ?第2に「失敗は成功のもと」とはよく言ったもので、マーティンがタスマニアタイガーらしき動物の追跡中に誤って谷底に転落したところ、そこで散乱している多数の動物の骨を見つけたこと。これって一体ナニ?なるほど、さすが百戦錬磨のハンターの推理だ。
 ライバルハンターとの対決を制したうえ、無惨に焼け落ちたジャラの家の中でルーシーもサスも死亡したことを知ったマーティンは、遂にクライマックスとなるタスマニアタイガーとの対決へ。さあ、そこではどんな展開が待っているの?そして、その結末は?さらに、1人だけ助かったバイクとマーティンとの父子関係にも似たような人間的な絆とは?なるほど、この結末に納得!そこらあたりは、あなた自身の目でしっかりと。
                               2011(平成23)年12月28日記