日08-22

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」 
 

                    2008(平成20)年1月29日鑑賞<松竹試写室>

監督・脚本・製作:若松孝二
遠山美枝子/坂井真紀
坂口弘(連合赤軍書記長)/ARATA
永田洋子(連合赤軍副委員長)/並木愛枝
森恒夫(連合赤軍委員長)/地曵豪
坂東國男/大西信満
吉野雅邦/莬田高城
加藤元久/タモト清嵐
加藤倫教/小木戸利光
植垣康博/中泉英雄
青砥幹夫/伊達建士
伊藤和子/一ノ瀬めぐみ
寺林真喜江/神津千恵
山田孝/日下部千太郎
加藤能敬/高野八誠
寺岡恒一/佐生有語
大槻節子/藤井由紀
金子みちよ/安部魔凛碧
杉崎ミサ子/奥田恵梨華
山崎順/椋田涼
進藤隆三郎/粕谷佳五
行方正時/川淳平
中村愛子/木全悦子
小嶋和子/宮原真琴
尾崎充男/鈴木良祟
前沢虎義/辻本一樹
山本順一/金野学武
山本頼良/金野明日華
山本保子/比久廉
岩田平治/岡部尚
早岐やす子/田島寧子
向山茂徳/黒井元次
奥沢修一/玉一敦也
重信房子/伴杏里
塩見孝也/坂口拓
牟田泰子(あさま山荘管理人)/奥貫薫
さらぎ徳二/佐野史郎
金廣志/RIKIYA
2007年・日本映画・190分
配給/若松プロダクション、スコーレ株式会社

<まったく異なる視点から・・・>
 1972年2月28日午前10時に、あさま山荘に人質とともにたてこもる連合赤軍に対して人質救出作戦が開始された。この「あさま山荘事件」を描いた映画は2つある。1つは、高橋伴明監督の『光の雨』(01年)。もう1つは、原田眞人監督の『突入せよ!あさま山荘事件』(02年)。
 私は前者は観ていないが、後者を観て「不完全燃焼・・・消化不良・・・何か物足りない・・・」という小見出しで、①この映画があまりにも警察サイドから見た人質救出作戦の準備とその決行、そして警察官の犠牲を重ねながらの人質救出成功というストーリー一辺倒で、それ以外のものを何も描いていないということ、②連合赤軍は一体何を主張し、何を求めたのか?そして彼らはなぜ、あさま山荘にたてこもったのか?また何よりも、1972(昭和47)年という年は時代の流れの中のどこに位置していたのか?それらのことに全く触れられていないこと、③したがって、明確な時代設定や時代状況の説明もなく、また「敵」である連合赤軍が何者であるのかもこの映画の観客には全く知らされないまま、ただ困難な状況下、人質救出に向かう警察集団の姿だけを追う結果になってしまっていること、の不満を述べた(『シネマルーム2』205頁参照)。
 しかし、今回の若松孝二監督の映画は、まさにそのタイトルどおり、連合赤軍がその結成からあさま山荘事件へ至った道程(みち)の実録。すなわち、私が大学に入学した1967年前後の学生運動が高揚する中、1969年に赤軍派が結成され、1972年2月のあさま山荘事件に至るまでの道程(みち)を若松監督が「実録」として描いたもの。プレスシートにおける若松監督のインタビューでは、「連合赤軍を題材にした作品はこれまでもありましたけれど、僕は、『突入せよ!』だけは許せなかった。あれは、山荘の内側の若者のことを何も描いてないでしょう。表現をする人間は、権力側から描いたらダメですよ」と述べているが、私はその視点に80%以上賛成。
 2008年1月という今の時代状況の中、「なぜ、今あさま山荘事件なのか?」という視点を含めて、『突入せよ!あさま山荘事件』とは全く異なる視点から、あの「あさま山荘事件」を見直してみることも大切では・・・?

<私の大学時代は、1967年4月から1971年3月まで>
 私が阪大に入学したのは1967年4月で卒業は1971年3月。私は大学入学後、すぐに学生運動に参加した。また、1人司法試験の勉強を始めたのが大学3回生の21歳の誕生日だから、1970年1月26日。したがって、この時まで私なりの参加形態で学生運動に関わっていた。もちろん、この映画に登場するようなド派手なものではなかったが・・・。
 そのため、この映画に登場する①1967年10月8日の佐藤総理の訪米阻止、②1968年10月21日の国際反戦デーなどにも「ある形」で参加している。また、③1969年1月18日の東大安田講堂事件はテレビで観ていたが、その数カ月前には「東大闘争」にも「参加」したことがある。そんなわけで、日大全共闘の結成(1968年5月27日)等の動きはこと細かく知っている。しかし、試験勉強を始めた後の①赤軍派議長、塩見孝也の逮捕(1970年3月15日)、②革命左派による、板橋区上赤塚交番襲撃事件(1970年12月18日)、③赤軍派国際委員の重信房子のレバノンへ脱出(1971年2月28日)、④赤軍派と革命左派による、統一赤軍の結成(1971年7月15日)、⑤1カ月後、名称を「連合赤軍」に変更、等の動きはニュースで知っている程度。
 私の司法試験合格は1971年11月だったが、その頃から連合赤軍が山にこもっての軍事訓練を始めたらしい。そして翌1972年1月から有名な「総括」が始まったが、それをリードしたのは連合赤軍の委員長である森恒夫(地曵豪)と副委員長である永田洋子(並木愛枝)の二人。そして、榛名ベースが警察に発見されたため、山越えを開始したのが1972年2月16日だが、坂口弘書記長(ARATA)ら5名は2月19日あさま山荘に立てこもることに。そして皮肉なことに、彼らが最大の敵とみなしていたアメリカ帝国主義のニクソン大統領が理想の国と考えていた共産国家中国の毛沢東と会談したのは、坂口弘らがあさま山荘に立てこもっている2月21日のこと。そして遂に2月28日の機動隊突入劇にいたったわけだ。
 この時期は私が司法試験に合格し、1972年4月からの司法研修所入所に向けて最ものんきな時期だったから、これらの動きは連日テレビを食い入るように観ていたもの。

<見どころ その1─「総括」の実態>
 若松孝二監督がこの映画を監督・製作したのは、「なぜ、若者は立ち上がったのか?なぜ、追いつめられていったのか?なぜ、同志に手をかけたのか?なぜ、山荘で銃撃戦を繰り広げたのか?あの時代、いったい何が起きていたのか?」を今の世に問うため。そしてこの映画が3時間10分と長いのは、若松孝二監督があくまで「実録」にこだわったため。
 そんな実録モノのこの映画の見どころは2つある。その1つは連合赤軍によってすっかり有名となった「総括」の実態。まるで軍隊ごっこのような(?)軍事訓練の様子や、共産主義思想を身につけるための学習の様子は、若松孝二監督がいろいろと聞き取り調査をしたことを元に描かれた実録だが、すごいのは森恒夫と永田洋子を中心としたすさまじい「総括」の実態。新聞で見ていた「総括」とは、こんな実態だったのかということがよくわかる。
 そこで、私たちが考えなければならないのは、「なぜそうなったのか」ということ。もちろん簡単にそれを理解することはできないが、この映画がそれを考えさせる重大なネタを提供していることはまちがいない。

<見どころ その2─山荘内での5人の言動>
 私が司法試験に短期で合格でき、また「しゃべり弁」と「書き弁」としての能力がある程度身についたのは、学生運動で書くこととしゃべることの訓練を徹底的にやったおかげ。つまり、受け身になって一方的に聞くだけの授業を受けるのではなく、書くため、しゃべるために主体的に勉強する習慣が身についたわけだ。あの当時のしゃべり方が理屈っぽかったのは当然だが、人質とされたあさま山荘の管理人牟田泰子(奥貫薫)に対するリーダー坂口弘のしゃべり方を見ていると、その理屈っぽさがよくわかる。この映画の第2の見どころは、山荘内での坂口をはじめとする5人のそんな言動だ。
 坂口の言い分によれば、山荘に立てこもったことについては一方的に借用しているだけ。また管理人は人質ではなく、坂口たちの保護者。さらに管理人に要請したのは、革命側についてくれとはいわないので、権力側にはつかず中立でいてくれ、ということ。そして、坂口は管理人には絶対危害を及ぼさないと約束したが、さてこんな理屈が通用するの・・・?
 誰しもそう思うのは当然。しかし、彼らが金品目当ての強盗犯ではなく、あくまで革命を目指している兵士だと自分を認識していることは明らか。そして、『突入せよ!あさま山荘事件』だけは「許せなかった」と若松孝二監督が語っているのはまさにそういう視点。あさま山荘内における2月19日から2月28日までの10日間の様子も「実録」だから大きな価値がある。もっとも、そんな実態だったとしても、これを許すことは到底できず、重大な犯罪であることは明らかだが、ここでも今私たちに必要なのは、なぜ彼らはそこまで思いつめていたのか、という視点。私はそう思うのだが・・・。

<あの美人女優、坂井真紀が出演!>
 連合赤軍で最も有名な女性はおそらく2000年に大阪で拘束された重信房子だろうが、この映画には彼女の親友だったという遠山美枝子が登場する。学生運動初期の時代、デモに参加している重信房子や遠山美枝子の姿を見ていると初々しくて結構美人だが、何とあの美人女優坂井真紀がこの遠山美枝子役で出演!1970年生まれの坂井真紀は、前から重信房子という女性に興味があったとのこと。そこで本作品のことを、さらぎ徳二役で出演している友人の佐野史郎から教えられ、オーディションに駆けつけたとのことだ。
 革命左派から合流し、連合赤軍の副委員長をつとめた永田洋子から嫌われた(?)彼女は、委員長の森恒夫らから徹底的な「総括」を受けることになるのだが、そこには「共産主義者思想を固めるため」という大義名分だけではなく、女の嫉妬という面もありそう・・・?そんな、微妙な女同士の感情を含めた「総括」の「実録」を坂井真紀が熱演する壮絶なシーンは、この映画のクライマックスの1つ。是非そこにも注目を!
                               2008(平成20)年2月2日記