日06−246

「NANA2」
           

                 2006(平成18)年12月5日鑑賞<東宝試写室>

監督・脚本:大谷健太郎
原作:矢沢あい『NANA』(集英社刊)
大崎ナナ(ナナ、ブラストのボーカル)/中島美嘉
小松奈々(ハチ)/市川由衣
タクミ(トラネスのリーダー)/玉山鉄二
ノブ(ブラストのギタリスト)/成宮寛貴
ヤス(ブラストのリーダー)/丸山智己
レン(トラネスのギタリスト、ナナの恋人)/姜暢雄
シン(ブラストのベーシスト)/本郷奏多
レイラ(トラネスのボーカル)/伊藤由奈
ナオキ(トラネスのドラマー)/水谷百輔
東宝配給・2006年・日本映画・130分

<『NANAーナナー』の大ヒットは当然・・・>
 2005年9月に公開された矢沢あい原作の『NANAーナナー』は興行収入40億円をあげる大ヒットとなったが、「こんな音楽映画、オレは大好き!」と評論した(『シネマルーム8』192頁参照)とおり、私にとってもそれは当然。今その評論を読み返してみると、その後私の最大の注目女優となった宮アあおいをこの『NANAーナナー』ではじめて知ったことがよくわかる。そのうえ、TRAPNEST(トラネス)の『ENDLESS STORY』というバラード曲や、BLACK STONES(ブラスト)のボーカルであるナナ(中島美嘉)が歌う『GLAMOROUS SKY』に私が大いに注目していたことや、ブラストのリーダーであるヤス(丸山智己)が弁護士とロックバンドリーダーという2足のわらじをはいていたことを知ってビックリしたことなどが、我ながら実にうまく表現されている・・・?したがって、そんな『NANAーナナー』が大ヒットしたのは当然。

<あの『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編が・・・>
 そんな場合、パート2をつくるのが非常に難しいことは当然で、いつも「柳の下にどじょうが2匹いる」と思ったら大まちがい・・・。昨日『キネマ旬報』12月下旬号を読んでいると、2005年の日本アカデミー賞で12部門の賞を受賞した『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編が、前作と同じスタッフ・キャストで製作されることが決定したとの情報が目に入った(22頁参照)。そこで阿部秀司エグゼクティブ・プロデューサーは「私たちが絶対にやってはいけないのは、“1作目でやめておけば良かったのに、2作目なんてつくるから・・・”と言われることです。それだけは絶対に避けなければならない」と語っているが、まさに名言・・・。

<『NANA』のパート2は・・・?>
 そんな記事を読んだ翌日に『NANA2』を観たわけだが、この阿部氏の懸念がズバリ的中してしまうことに・・・。つまり、そう思わざるをえないほど、前作に比べるとパート2の出来は良くないということだ。プレスシートには「待望の続篇にして感動の完結篇!!」とある。しかし、『NANA』ではハチ公こと奈々(宮アあおい)の天然ボケの良さが光っていたが、『NANA2』では奈々(市川由衣)のだらしなさや、泣くしか能がないバカさ加減が目につくばかりで、いい加減うんざり・・・。
 他方、ナナの方も、芸能界の汚さを乗り越えていくというよりも、その中にドップリと浸かったうえでメジャーになる道を選ぶことになるため、本来の良さが失われていく感じ・・・。さらに、『NANA2』で目につくのは、ナナと奈々のモノローグがやたらと多いことと、完結篇を意識しているためかまだ若い2人のいかにも覚ったようなセリフが多いこと。しかも、奈々のあの男、この男と絡んだ話が多いから、やたらトータル時間が長くなり、途中何度もあくびをかみ殺す苦労をすることに・・・。

<奈々って根っからのバカ・・・?>
 『NANA2』はナナよりも奈々の方にウエイトを置いているが、それは奈々が男に翻弄される姿をストーリーのメインに据えているため・・・?奈々が芸能人に憧れる気持やトラネスにゾッコンの気持もわからないではないが、それはあくまで憧れや夢の領域にとどまるべきもの。ところが奈々の場合は同居人のナナが芸能人であるため、その関係者と知り合うチャンスが増えることになる。そこで『NANA2』では、憧れのトラネスのリーダーであるタクミ(玉山鉄二)からひと声かけられて誘われると、奈々はそれだけで夢心地になってたちまちダウンし、ホテルのスイートルームへ入っていくことに・・・。相手は「遊び」とわかっていても、つい一瞬の夢だと自分を納得させている奈々の姿を見ていると、思わず「お前って根っからのバカか!」と思ってしまったが・・・。

<タクミはこんな男・・・>
 タクミの女遊びが有名なことは、ナナが再三注意していたとおりだが、その本性が暴露されたのは、トラネスの打ち上げパーティーの席。気が進まないままこのパーティーに出席していたブラストのノブ(成宮寛貴)とシン(本郷奏多)は、奈々の話が出たとたん、タクミが「あの子とはもうやっちゃったよ」とさりげなく話すのを聞いてビックリ。とりわけ、奈々に対して想いを寄せていたノブが思わずタクミに殴りかかりそうになったのは当然。
 『NANA2』では、タクミの幅広い女関係(?)は詳しく描かれていないが、後半ロンドン公演に行く際、ボーカルのレイラ(伊藤由奈)からロンドンに「現地妻」がいることが語られるから、その女遊びはインターナショナル級・・・?したがって、こんな男に心底からホレたら女の方が参るに決まっている・・・。奈々も頭ではそうわかっているのだが、その後もついズルズルと便利屋的につき合っている様子。しかし、よほどのバカ女でない限り、その末路は見えそうなものだが・・・。

<ノブは実にいい男>
 こんなタクミに対してノブは、ナナが「奈々と同じで、純粋で素直ないい男」と言うとおりの男。奈々に対して、「タクミとの気持の清算がついたら、いつでも俺のところに来てくれ」と言うだけで精一杯だったが、その想いは十分奈々に伝わったはず・・・。そんなノブの後押し(?)のおかげもあり、やっと奈々はタクミに対して「もう電話もかけてこないで!」と清算宣言をしたから、これによって奈々の男関係は一件落着と思われたが・・・。

<タクミの意外な行動の本心は・・・?>
 プライドの高いタクミは自分から女に清算宣言をすることには慣れていても、女からそんなことを言われたことはないようで、意外な奈々の言葉にビックリ。すると、男とは不思議な動物で、それまでは単なる遊び用の女にすぎなかった奈々がなぜか急に気になり始めたうえ、清算宣言の背景にノブがいることがわかると、がぜん闘争本能に火がついたらしい・・・?したがって、そこからのタクミの巻き返し攻勢(?)がこの映画の1つの見モノ・・・?もっとも、そのやり方は一見クールでスマートだが、その実強引で汚いもの・・・?そのうえ、何と奈々は妊娠していることが判明したから大変。お腹の子の父親はタクミそれともノブ・・・?
 こんな状況下でのドロドロ劇は世の中によくある話だが、この映画の展開を見ていると、何よりも奈々が肝心な時に泣きじゃくってばかりで、ひと言も説明や弁明そして提案をしないから、観ている方はイライラするし、事態はより悪くなるだけ・・・。そのうえ意外だったのは、あれほどのプレイボーイだったタクミが、「産めよ、俺が認知するから」と言ったり、最後には「結婚しよう」とまで言い出したこと。これがどこまで本心か私には疑わしいうえ、もしそれが本心で、奈々がホントに子供を産み結婚したとしても、タクミとの結婚生活がうまくいくはずはないと思うのは当然。ところが、天然ボケの奈々がそんなタクミのやさしい言葉に再度コロリと参ってしまうから、思わず私の口から「エエー」という声が出そうに・・・。いくら少女コミック上の物語といっても、こんなストーリーがまかり通る現状はかなりヤバイのでは・・・?

<スキャンダルを逆手にとるのは・・・?>
 『NANA2』の男問題は奈々が中心で、ナナはトラネスのギタリストのレン(姜暢雄)とそれなりにうまくやっている様子。そんな中、ある日ナナのバンド、ブラストが業界最大手のガイアレコードのプロデューサー川野(田辺誠一)の目にとまったところから、メジャーデビューの準備が始まることに。ところがそんな中、レンとナナの交際がパパラッチによって写真撮影され、スキャンダラスな報道がされてしまったから大変・・・。
 普通はこれによってメジャーデビュー断念となるところだが、そこは川野もしたたか、そしてナナもそれ以上にしたたかだった。つまり、スキャンダルも宣伝の1つという価値観で一致した(?)2人は、なお一層闘志を燃やし、遂に川野の提案によって新宿で開催されたブラストのゲリラライブは大成功!これによって、以降ブラストとトラネスは後世に語り継がれるロックバンドになったということだが、そこまで「何でもあり」でホントにいいの・・・?

<目につく「ポストプロダクション」のまずさ・・・>
 『NANA2』は2時間10分とちょっと長め・・・?もちろん、多少長くても時間の経過を忘れさせてくれる映画はいくらでもあるが、『NANA2』は時間が長く感じられてならなかった作品の1つ・・・。その原因はいろいろあるが、その1つは私が12月3日(日)に受験した第2回映画検定3級の問題に出題された「ポストプロダクション」のまずさ・・・?「ポストプロダクション」とは、撮影を終えた素材を前提とする編集作業のことで、素材を生かすも殺すも編集次第(『映画検定 公式テキストブック』168〜169頁参照)。
 冒頭の新宿のゲリラライブに行こうとする奈々の姿がラストに向けて再現されるのはいいのだが、それがあまりにも冗長すぎるのが難。しかも、ゲリラライブでのクライマックスが終わった後の説明がまたダラダラと続くため、間延びすることおびただしいものがある。試験日に向けて勉強した「ポストプロダクション」という言葉の重要性がこんなにピッタリ理解できたことにビックリ。

<2人のNANAの友情は・・・?>
 ナナと奈々という2人のNANAを結びつけているのは、エレベーターはないものの、安くて眺めのいいあの「お気に入りの部屋」とイチゴの模様の入った2つのグラス・・・?そんな2人の共同生活もさまざまな事件が起きてくる中、次第にすれ違いが多くなり、遂に奈々が置き手紙を残して部屋を出ていくことに・・・。つまり、ナナはメジャーデビューに向けて芸能界の荒波の中に乗り出していくことになったのに対し、奈々はタクミと結婚してその子供を産み家庭に入る道を選択したわけだ。このように、2人の道は今は全く違うことになったが、2人の気持がなお通じ合っていることは、新宿でのゲリラライブを奈々が一等席で観ていると確信しているナナの姿を見れば明らか・・・。
 しかし、奈々がいるだけでブラストのノブやシンの心が和やかになり、ブラストのメンバーの心が1つにまとまっていたあの楽しかった花火の思い出は再現できるの・・・?「男の友情」だって怪しいものだが、これだけ男問題でもめにもめた2人のNANAの友情の行き着くところは・・・?
                               2006(平成18)年12月6日記