洋05−18

「サイドウェイ(SIDEWAYS)」
           

             2005(平成17)年2月8日鑑賞<試写会・リサイタルホール>

監督・共同脚本:アレクサンダー・ペイン
マイルス/ポール・ジアマッティ
ジャック/トーマス・ヘイデン・チャーチ
マヤ/ヴァージニア・マドセン
ステファニー/サンドラ・オー
ヴィクトリア/ジェシカ・ヘクト
20世紀フォックス映画配給・2004年・アメリカ映画・130分

<人生とワインの共通点は?>
 ちょっとシャレた質問をしてみよう。それは「人生とワインの共通点は?」という質問。その答えは、この映画のパンフレットに書いてある「人生は極上のワインのように、そのピークを迎える日まで日ごとに熟成し、複雑味を増す。それからはゆっくりと坂を下っていくが、ピークを過ぎた味わいも捨てがたい・・・」という、これまたおシャレなもの。
 この映画は、カリフォルニアのワイナリー(葡萄酒醸造所)へワインツアーに出かけた2人の中途半端な男(?)を主人公としたもの。旅行中、2人の男はそれぞれある女性と親しくなり、そこから新たな人生が展開していくことに・・・。そう、ワインと同じように、ピークを過ぎた中年男や中年女だって、まだまだ味わい深い人生があるもの・・・。そんな人生讃歌がこの映画のテーマ・・・。これはいいよ。

<対照的な2人の男>
 この映画は中途半端な男2人が主人公。その1人は、小説家を志望し、現在出版社にその原稿を預けている国語教師のマイルス(ポール・ジアマッティ)。彼は妻のヴィクトリア(ジェシカ・ヘクト)と2年前に離婚したが、いまだにそのショックから立ち直れない中途半端な中年男だ。しかし、ワインに関しての造詣が深くかつ舌もたしかで、この面だけは超一流!
 もう1人は、マイルスと対照的なプレイボーイ(というよりとにかく無類の女好き!)で、今は少し落ちぶれているもののいまだ現役の俳優であるジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)。映画の中でも、「〇〇のコマーシャル」といえば相手にわかるほどだから、まずまずか・・・?

<なぜか男2人がワインツアーへ・・・?>
 この2人はまるで正反対の性格だが、なぜか気が合う大学の同級生。そして、これまで女遊びを続け独身を続けてきたジャックがある娘に結婚を申し込んだため、最後の独身生活を楽しむべく、男2人でワインツアーに出かけることになったわけだ。マイルスはワイナリーをめぐる旅にジャックを案内することによってたっぷりとワインを味わい、またゴルフ三昧の旅を楽しもうと考えていたが、プレイボーイのジャックはそうではない。彼は実は、独身最後の旅行で大いに羽を伸ばし、次々と女の子をひっかけようと考えていたから、行く先々でドタバタが・・・?

<女2人も対照的!>
 ワインに造詣の深いマイルスの案内で入ったワインレストランには、美人ウエイトレスのマヤ(ヴァージニア・マドセン)がいた。ジャックは早くもマヤにモーションをかけたが、マヤもすごいワイン通。そしてどうもこのマヤはマイルスと気が合っているらしい。そこでジャックは、マヤはマイルスにまかせることにした(?)が、ジャックの目から見るとマイルスとマヤはその「進行」が遅い!それを尻目に、自分は翌日のワイナリーで出会ったステファニー(サンドラ・オー)とたちまち意気投合!ステファニーには子供はいるが、夫とは既に離婚しているから自由の身。そのうえステファニーは意外に「スキ者(?)」だったから、ジャックとステファニーは急接近し、たちまちベッドイン・・・!ところが何と、ジャックはステファニーに本気で惚れた(?)ようで、結婚式の延期を真面目にマイルスに相談してくることに・・・?

<アレクサンダー・ペイン監督の映画のつくり方>
 この『サイドウェイ』を監督・共同脚本したアレクサンダー・ペインは、ジャック・ニコルソン主演の『アバウト・シュミット』(02年)で一躍注目を浴びた監督。そしてこの『サイドウェイ』では第77回アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされるという大出世!1週間にわたる男2人のワインツアーの様子を、日にちを追って淡々と描いていく手法は、『アバウト・シュミット』と同じもので、今どきのハリウッド映画には珍しいもの。これでは何10億円もの製作費をかける必要がないのも当然だ。そして、テーマと主人公となる人物のキャラクターをうまく設定し、それに絡めて数人の登場人物たちとの心暖まる人間ドラマを描けば、それだけで観客の心に訴えかける作品にすることができる数少ない名監督。『アバウト・シュミット』は1人の主人公の生き方をテーマにしたものだったが、この『サイドウェイ』は2人の男と2人の女がほぼ同じウエイトで描かれている。何よりも共感できるのは、スクリーン上に登場するこの4人の男女が等身大のキャラクターであること。つまり私たちと同じように、悩み喜びそして恋している男女であるということだ。

<ワインツアーの行く先は?>
 たった1週間だけの男2人のワインツアーながら、行く先々でジャックが女に目をつけていくため、その旅は波瀾万丈そしてドタバタの連続。主人公たち4人の共通点は、結婚について全員が何らかのトラブルを抱えていること。これぞ、中年男、中年女の共通の特性!また、そうだからこそ最初のQ&Aにある、人生と極上ワインのピークとの対比が面白いわけだ。急接近し、たちまちベッドインまで果たしたジャックとステファニーの仲は、そのままスンナリと進むのか・・・?ジャックは1週間後に結婚式を控えているのだから、そんなはずはない!またワインを共通の話題とするマイルスとマヤはお互い離婚を体験した立場だから、今度はじっくりと2人の愛を確かめ合うことができるのか・・・?マイルスは別れた妻への未練をきちんと断ち切ることができるのか・・・?
 男2人、女2人の「主人公」たちがそれぞれのテーマを抱えて歩んでいく人生は、果たしてどのようなものになるのだろうか・・・?

<アカデミー賞助演男優賞・助演女優賞の両方にノミネート!>
 この『サイドウェイ』は第77回アカデミー賞作品賞と監督賞のみならず、ジャックを演じたトーマス・ヘイデン・チャーチが助演男優賞に、マヤを演じたヴァージニア・マドセンが助演女優賞にそろってノミネートされるという快挙を果たしている。それぞれ5名ずつノミネートされた中の1人が最優秀助演男(女)優賞に選ばれるわけだから、その5分の1の確率は厳しいが、ノミネートされただけでも十分価値があることは明らか。しかも、「1つの作品で男女そろって」というケースは珍しいはず。その結果を注目したい!

<マイルスもマヤも相当なもの>
 私にはさっぱりわからないが、この映画を観ている限り、マイルスもマヤも相当なワイン博士。もっとも、ワインについての知識を持っている、言葉どおりのワイン博士はたくさんいるが、味や香りを本当に見分けられる舌(味覚)や鼻(嗅覚)をもっている人は少ないのでは・・・?物知り顔をしてうんちくを語っていても、目隠しをして試飲させてみれば、1000円のワインと1万円のワインの良し悪しも区別できないヤツがいっぱいいるはず。それは、ダウンタウンの浜田雅功が司会するテレビの人気番組『人気者でいこう(芸能人格付けチェック)』をみても明らかだ。要するに、自称ワイン博士はたくさんいても、ニセモノが多くホンモノは少ないということ。しかし、この映画におけるマイルスとマヤの博士ぶりは完全にホンモノ!

<あなたはワイン博士?>
 世の中に酒飲みは多い。またその好みは、ウィスキーやワインをはじめとする洋酒、日本酒、ビールなどさまざま。最近は焼酎ブームで、私も焼酎党。
 酒飲みにもいろいろなタイプがあるが、その1つとして、飲むと酒についてのうんちくをかたむけ、講釈したがるタイプがある。これは、お互い気が合えばいいが、合わないとうっとうしいもの。日本酒党にもこのタイプがいるが、各地の銘酒・地酒を置いている店に行かない限り、そうそう日本酒談義で盛り上がることはない。しかしワインの話になると大変。世の中にはワイン通やワイン博士を自称している人が多いから、イタリアンレストランやフレンチレストランに入り、そういう話題になるともうエンドレス・・・?最近は日本料理の店にもワインを置いてあることが多いから、ここでも、「赤か白か」「フランスかイタリアか」等々のワイン談義が始まると大変・・・。日本でもそうなのだから、ワイン博士がもっとたくさんいる西欧諸国ではもっと大変だろう・・・?

<飲酒運転容認(?)はちとヤバイ・・・?>
 この『サイドウェイ』はアカデミー賞作品賞にノミネートされているが、弁護士の私が観てちょっとヤバイと思うのは、ワイナリー巡りを楽しむ2人(4人)は、たっぷりとワインを飲んだ後も平気で車を運転していること。そりゃ、アメリカは広いし、この映画の舞台となっているカリフォルニア州サンタバーバラ郡にあるワイナリーも広大な敷地の中に存在している。そして道路も広く車も少ないから、交通事故の可能性は少ないだろうが、こりゃ、レッキとした飲酒運転!飲酒運転について、この映画が何の注意も払っていないのはちょっとヤバイのでは・・・?

<試写会でのワインサービスは粋なもの!>
 『サイドウェイ』を試写会で私が観たのは2月8日の午後7時から。上映前の挨拶によると、何と、「上映終了後、自由にカリフォルニアワインを試飲して下さい」とのこと。こりゃ楽しみ!そして上映終了後、ドアを開けた途端、ロビーいっぱいにワインの香りが漂ってきた。こりゃ最高!顔見知りの人と出会ったこともあり、そこでは、紙コップに注いでくれたワインを飲み、これがついつい2杯、3杯と・・・。こんなワインサービス付きの試写会なら毎日でも行きたいものだが・・・。ワインを話題とした映画を観た後、ワインを飲みたくなる、これはまるでパブロフの「条件反射」そのものだとヘンに納得!

<カリフォルニアワインは世界を席巻するか・・・?>
 パンフレットには「『サイドウェイ』登場ワイン品種&ワインガイド」の解説があり、さらにロサンゼルス在住のライターである猿渡由紀氏による「世界に影響力を持つハイクオリティのカリフォルニアワイン」と題する詳細な解説がある。ここに書いてあるややこしい名前のぶどうやワインを覚えるのは面倒くさいから、私は到底ワイン博士になれそうもないが、飲む方は大スキ!そして私は、「やっぱりワインはフランスが本場」とか「やっぱり〇〇でなくちゃ」などと思っていないし、そういうこだわりは全くない。要するに、自分が飲んだ時においしいと感じればそれでいいわけだ。そういう意味では、1本1000円のワインでもおいしいものはたくさんあるし、カリフォルニアワインには値段の安いものが多い。猿渡氏の解説によれば、アメリカ流ワイン製造法はフランスとはかなり違うようだが、イラク戦争突入にあたって、アメリカのブッシュ大統領とフランスのシラク大統領が対立したような、米仏対立構造とならず、平和のうちにフランスワインとカリフォルニアワインが併存していってもらいたいものだ!
                              2005(平成17)年2月9日記