日本映画03年No.2

13階段

                               2003(平成15)年1月22日鑑賞
(高野和明原作/長澤雅彦監督/反町隆史/山崎努/笑福亭鶴瓶)(配給:東宝)

<江戸川乱歩賞受賞の原作>
  この映画の原作は、高野和明の「13階段」。2001年の第47回江戸川乱歩賞で絶賛を浴び、満場一致でこの賞を受賞した作品だ。

<主役は反町隆史vs山崎努>
  主役は、殺人罪で起訴されたものの傷害致死罪となり、懲役3年の実刑にとどまりながらも、心に深い傷を持った三上純一。この複雑な人物を2002年のNHK大河ドラマ「利家とまつ」で織田信長役をカッコよく演じたあの反町隆史が演じる。三上は今、服役を終えて仮出所し、父親の経営する小さな町工場で働いていた。
  そしてこの対局にあるのが、頑固一徹な刑務官南郷正二。南郷を演ずるのは、円熟味たっぷりの渋い演技で今や存在感抜群の山崎努。多くの死刑囚たちの生きざまを見てきた南郷。しかしその南郷も、法の名の下において、自ら死刑執行のボタンを押したことのこだわりから抜けきれないでいる。そして今南郷は、死刑の刑が確定し、その執行を待つばかりとなっている死刑囚260号の冤罪を信じていた。

<死刑囚260号は冤罪か>
  樹原亮(宮藤官九郎)は、殺人罪で起訴された。樹原は一審でも二審でも無罪を主張したが認められず、最高裁でも上告は棄却され、ついに死刑が確定した。今は死刑囚260号と呼ばれている。その罪は、保護司をつとめていた宇津木夫妻への殺人罪だ。宇津木夫妻は凶器の斧でメッタ打ちにされて殺され、客間は血の海に染まっていた。この惨殺事件においては、死刑という極刑も当然かもしれない。樹原の死刑執行までの猶予期間は約3ヶ月。樹原は近づく死刑執行の日に怯えながら毎日を過ごしていた。
  そんな中、南郷は、笑福亭鶴瓶が演ずる杉浦弁護士から、「死刑囚260号の殺人事件は冤罪だ。真犯人を捜し、樹原の冤罪を晴らしてくれ」という依頼を受けた。依頼主の名前は明かせないという奇妙な依頼だが、多額の報酬も出るというものだ。
  南郷は、刑務官退職後、父親がやっていたパン屋を再び開くための資金づくりと、樹原は冤罪だと信じる自らの信念の下にこれを引き受けた。そしてその相棒として、同じく人を殺したことがあり、その償いを求めて人生を模索している三上を指名した。

<真犯人探しと再審請求に向けた執念の調査>
  さあ、杉浦弁護士とチームを組んだ二人の真実究明への途は開かれるのか・・・。そしてその過程の中で明らかにされるそれぞれの人間が長い間背負ってきた過去とは・・・。このストーリーは結構複雑で難しい。マスコミ向けパンフレットでも、人物相関図とその解説は封をされ、映画を観る前にタネ明かしすることは厳重に禁じられているほどだ。しかしポイントは非常にうまく表現され、「10年前の出来事」、「13年前の出来事」を語るための「時差」の処理の仕方もうまいものだ。したがって、実は・・・というAの事件の真相やBの事件の展開、そしてこれらの事件に絡む数々の登場人物の絡まりや人間模様も十分理解することができる。しかし同時に、あとからパンフレットを読みながら、よく復習することも大切だ。

<思い出すのは『砂の器』>
  この作品は、松本清張の小説を原作とした1974年の日本映画の名作『砂の器』(野村芳太郎監督、加藤剛、丹波哲郎主演)のスケールの大きさには及ばないだろう。しかし人間の「命の尊さ」と死刑制度の是非、そして人間の「業」や「宿命」という悲しくて重いテーマを丹念にそしてミステリアスに描いた日本映画の名作だ。原作もさることながら脚本づくりの巧妙さがこの映画成功の第一要因だろう。そして反町クンの演技はまずまずとして、当然ながら山崎努の名演技が作品全体の重みに大きく貢献している。
                                  2003(平成15)年1月23日記