洋画02年No.5
第1部
「ロード オブ・ザ リング ー旅の仲間ー」     
                              2002(平成14)年2月20日鑑賞(試写会)
(ピーター・ジャクソン監督/イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/リヴ・タイラー/ヴィゴ・モーテンセン)

<前評判のものすごさ>
 「その指輪を捨てなければ、この世は闇となる。」、「世界を滅ぼす魔力を秘めた1つの指輪をめぐり、選ばれし宿命の勇者9人と悪の勢力との壮絶な戦いが今、幕を開ける!!」、「全てが桁外れ!全世界最大のスケールで贈る21世紀映画界の大本命。」という売り込みで、今、新聞紙上を賑わしている超大作が「ロード オブ・ザ リング」だ。
 2002年2月12日、第74回アカデミー賞のノミネートが発表され、本作品は作品、監督、助演男優、視覚効果、撮影、メイクアップ、衣装デザイン、美術など最多13部門にノミネートされた。ちなみに私のおすすめ作品、ニコール・キッドマン主演の「ムーラン・ルージュ」は作品、主演女優、美術など8部門にノミネートされている。

 「ロード オブ・ザ リング」は、イギリスのオックスフォード大学教授、ジョン・ロナルド・ルーエル・トールキン(J.R.R.トールキン)原作の「指輪物語」を映画化したものである。新聞記事によると「指輪物語」は、「20世紀の1冊」にも選出され、20世紀最高の文学と称されている、とのことだが、残念ながら私はそのさわりの部分も読んだことがなかった。しかし、はるか昔の「中つ国」という名の国が舞台となり、悪の冥王サウロンが作り出した、世界を滅ぼす魔力を秘めた恐ろしい指輪をめぐって繰り広げられるアドベンチャー物語だということは新聞記事等からわかっていた。
 要するに空想の世界で、空想上のさまざまな種族や化け物たちが登場し、空想のストーリーが展開される、大人のファンタジー冒険小説だ。

<イギリス版ファンタジー映画のむずかしさ>
 予告編は数回見たが、戦闘場面での圧倒的な迫力(物量戦)やCGの技術を多用した特殊な登場人物(化け物?)たち、そして予想を越えたさまざまな種族の風貌やメイクアップには圧倒されるものの、ストーリー展開は今ひとつつかめないまま、とにかく「観なければ・・・」という思いばかりが先行していた。そこで、かなり時間を無理して2月20日の試写会へ出かけたが・・・・・。

 映画は最初、指輪のいわく・因縁についてのナレーションから始まる。そしてその間、スクリーン上では、悪の冥王サウロンたちの闘いの場面と指輪をめぐるさまざまなストーリーが展開される。しかし正直言って、これだけの解説を聞いても何が何だかよくわからない。
 そしてその解説が終わると、遠い遠い、はるか昔の「中つ国」の豊かな大地に暮らすホビット族(小人族)の姿が描かれる。ホビット族のビルボは、今111歳となったが、ふとしたことから魔法の指輪を持っている。ビルボは、この指輪を甥のフロドに譲り、姿を消すが、この指輪こそが悪の冥王サウロンが探し求めている世界を滅ぼす魔力を秘めた恐ろしい指輪だった。指輪を破壊するには、これを「滅びの亀裂」へ投げ込むしかない。そのため、フロドは魔術師ガンダルフに導かれ、「9名様御一行」で旅に出る。そして指輪を持って懸命に逃げるフロドたちと、これを追うサウロンの追っ手との間で激しい攻防戦が展開される。
 そしてその逃走劇の中、しだいに1人殺され、2人減り・・・・となっていく。そして最後は・・・。アレッというところで急に字幕があらわれ、映画の終了を告げる。

<中途半端なエンディング>
 なぜここで終わるのか・・・。
 多くの観客から思わずため息が漏れ、「えー!!」と言っている声が聞こえてくる。映画が終わり、帰路につく多くの観客たちの会話も、「よくわからない」、「何で、あそこで終わるの?」etc、疑問符のつくものばかりだ。さまざまな情報や資料から考えるに、この映画は壮大な3部作のファンタジー小説を3部作で映画化したもので、本作品はその第1作だから、だ。しかしそれでも「一応ここで終わり」、というケジメはつけてもらいたいと思うほど終わり方はあまりにあっけないものだ。

<原作に迫ってみよう>
 映画のスケール、色彩、撮影テクニックなどには確かにすばらしいものがある。しかし、我々日本人にはとにかく映画のストーリーがわかりづらい。そのため、どうしても興味が半減し、マンガチックな映画になってしまうのだ。試写会の翌日、インターネットで「指輪物語」を検索したら、指輪物語はもともとトールキン氏が自分の子供に語って聞かせた「ホビットの冒険」の続編として書いたものだとのこと。「ホビットの冒険」のあらすじは次の通りだ。

          主人公はホビットのビルボ・バギンズ氏、13人のドワーフ
        と魔術師ガンダルフにつれられてドワーフ達がその昔、竜ス
        マウグに追い出された故郷のエレボール山へ祖先の財宝を求
        めて旅に出ました。霜降り山脈で仲間と離れ離れになるが洞
        窟の中でゴクリと会い、姿の消える指輪を手に入れました。 
         再びドワーフ達と合流したビルボは、その指輪の力を使い 
        幾度となく一行の危機を救い、ついにエレボール山へ到着し  
        ました。指輪の力で姿を消しながら竜から財宝を1つとって  
        きます。宝物が無くなったことに気がついた竜は怒り狂い近 
        くの町のエスガロスを襲い、矢で射られ死んでしまいます。
         エスガロスの住人は被害を受けたのだから竜の財宝は自分
        達のものと主張し、危うくドワーフとの戦争になるところでした
        が悪しき軍勢の襲来に共同で対抗しこれを撃退します。竜の
        財宝を分け、ビルボは自分の家へと帰り幸せに暮らしました。


 このストーリー展開を受けた後、指輪物語は全3部作で構成されて完成した。第1部は「指輪物語:旅の仲間」、第2部は「指輪物語:二つの塔」、第3部は「指輪物語:王の帰還」だ。
 そのそれぞれに興味深いストーリーが展開されている。たしかに大人向けのファンタジー小説としては興味深く、面白いものだ。しかし逆にいえば本作品は、その1部だけを切り取って映画化したものだから、わかりづらいのも当然だ。

<アカデミー賞の行方は・・・>
 本作品が、衣装デザイン賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、美術賞等の部門でアカデミー賞を授賞してもそれはそれで納得できるが、最優秀作品賞にだけは選ばれてほしくないと私は思う。
 なぜなら、この程度の作品がもし最優秀作品賞を授賞するとすれば、アカデミー賞最優秀賞の価値が落ちるのではないかと心配されるからだ。
 第74回アカデミー賞の最優秀作品賞は、私のおすすめの「ムーラン・ルージュ」かもしくは、ラッセル・クロウが天才数学者を演じる、3月公開の「ビューティフルマインド」のどちらかにとってもらいたいと思う。

 最後にひとこと、「ロード オブ・ザ リング」はスケールが大きくまた視覚効果は強いものの、映画の出来としては並みの作品と言わざるを得ない。
                                       2002(平成14)年2月記