演劇04年NO2

宝塚歌劇 雪組公演
詩劇「スサノオ〜創国の魁」
グランド・レビュー「タカラヅカ・グローリー!」
           
 
                  
                      2004(平成16)年4月11日観劇<宝塚大劇場>

(『スサノオ』:木村信司脚本・演出/甲斐正人作曲・編曲/朝海ひかる/舞風りら)
(『タカラヅカ・グローリー』:小林公平原案/岡田敬二作・演出/朝海ひかる/舞風りら)

<90期生口上>
 今年も3月末に宝塚音楽学校から卒業生が巣立った。そして4月に憧れの宝塚大劇場で90期生として初舞台を踏んだのは50名。毎日変わる代表者3名による口上は最初の緊張する舞台。その初舞台生50名を加えた90名のラインダンスは圧巻!

<詩劇『スサノオ〜創国の魁』>
 スサノオは古事記に登場する英雄だが、姉アマテラスとの男と女の優劣というつまらない(?)テーマでの言い争いとスサノオの暴力のため、「太陽神」のアマテラスは「天の岩戸」に身を隠し、「大和の国」からは光が消えてしまった。自らの暴力を嘆くスサノオだが、八つの首を持つ大蛇ヤマタノオロチとの対決は避けることができない運命。平和な国を目指しながら剣をふるうことに悩むスサノオは、数々の戦いの末、遂に息絶えた。
 しかしスサノオの骨からつくった笛の音を聞いた天上界では、アマテラスが天の岩戸から現れ、スサノオを甦らせる決心を。そしてスサノオは「力の時代は終わった」と宣言し、平和の国・大和がここにスタートした!

<レビュー『タカラヅカ・グローリー!』>
 今年は宝塚歌劇創立90周年の年。そんな年の4月につくられたのが、記念レビュー『タカラヅカ・グローリー!』。初々しい90期生50名がこのレビューで初舞台を踏むことに。この中から将来どんな大スターが生まれるのか・・・?

<久しぶりの宝塚大劇場>
 宝塚大劇場で前に観たのは、昨年8月のミュージカル・プレイ『Romance de Paris』とレビュー・ファンタスティーク『レ・コラージュ』。それから既に8カ月も経っている。今日4月11日(日)は、宝塚の武庫川町におけるマンション建設をめぐる紛争に関連して現地で仕事があったため、早朝から宝塚へ。昼過ぎに仕事が終わった後、たまたま今日の夕方の予定がキャンセルとなった。大劇場では『スサノオ』をやっている。そこで、これを是非観たいと思って突然の観劇となったもの。仕事に同行していた事務所の吉岡寛子弁護士や事務局員の金子友次朗は、ちょっと呆れていたが・・・。

<イラク人質事件の発生>
 この『スサノオ』を観た4月11日(日)は、ちょうどイラクで日本人の民間人3名が人質となり、その「解放」をめぐってさまざまな情報が錯綜している時。
 また先日4月3日にはイラク開戦1周年を迎えたが、この時日本では、自衛隊のイラクへの派遣が完了し日本や日本人がいかなる国際的役割を果たすべきかについて少しずつ本音で議論され、日本そのものを考えなければならないという気運が少し盛り上がってきた時期。
 そんな時期に、この『スサノオ』を観ることはとても意義のあることだと私は思っている。なぜならこの『スサノオ』は、もちろん古事記を題材とした作品だが、大和の国=日本国のあり方を直接的なテーマとして脚本、演出された作品だから。

<古事記とは?>
 
古事記は上中下の三巻からなる書物で、奈良時代に編纂された天皇家の神話物語。天皇家の初代は神武天皇で、神武天皇以下の物語は中・下巻で描かれている。そして上巻は、その前の神々の時代の物語だ。中巻で登場するヒーローの一人が市川猿之助のスーパー歌舞伎等で有名な「ヤマトタケル」なら、神々の時代の物語の中で最も有名なヒーローがスサノオ(須佐之男命)だ。

<スサノオとアマテラス>
 イザナキ、イザナミの間から生まれたのは、長女アマテラス(天照大神)(太陽神)、長男ツクヨミ(月読)(夜の神)、そして次男スサノオ(須佐之男命)(海の神)の三人の子供。スサノオは姉のアマテラスと口論の末、暴力をふるったため、アマテラスは「天の岩戸」に隠れてしまい、そのため大和の国から光が失われることになった。そしてスサノオは追放され人間の国へ。
 人間の国へ追放されたスサノオは、ヤマタノオロチと対決して、これを退治し、その中で救い出したイナダヒメ(奇稲田姫)と結婚して葦原(あしはら)の中つ国を開いた。以上が大まかな古事記冒頭のストーリーだ。

<詩劇スサノオの物語の特徴その1 ストーリー>
 私が観劇した宝塚歌劇の詩劇スサノオも、この古事記にほぼ忠実に従ったストーリーとなっている。スサノオは朝海ひかる、イナダヒメは舞風りら、という配役。そしてアマテラスの力によって甦ったスサノオがイナダヒメと共に歩んでいくと宣言するとともに、平和の国、大和を宣言するというクライマックスでこの詩劇は終わることになる。
 場面は4場構成で、日本の物語であることを強調するため、@力強い太鼓が多用され、A歌詞はわかりやすい日本語が多く使われている。また、B衣装も、古代風の白を基調としたものになっている。ハイライトはスサノオによるヤマタノオロチ退治のシーン。実に巧く、この対決シーンを見せ場として構成している。

<特徴その2 アオセトナの役柄>
 また事実上、アマテラス(初風緑)よりも出番が多く、大きな役割を果たすのはかつて大和の国を滅ぼされたアオセトナ(水夏希)の活躍。森を治めるアオセトナは、ヤマタノオロチの生贄にされたイナダヒメの姉たちを、なぜか身のまわりにおいて楽しい生活をしている、とスサノオやイナダヒメに伝える。もちろん、これはインチキなのだが、大和の国に滅ぼされ、大和の国への復讐に執念を燃やすという役柄は、『陰陽師U』(03年)の映画でも中井貴一扮する幻角の役として使われていた共通のキャラクター。
 さらにこのアオセトナは、ヤマタノオロチがスサノオに退治された後、なんとアマテラスに化けて「降臨」して、イナダヒメやスサノオを斬り殺そうとまでするのだから、その執念は凄いものだ。

<特徴その3 スサノオの死亡とその蘇り>
 結局スサノオはヤマタノオロチやアオセトナとの対決で息絶えるが、自分の骨で作った笛をイナダヒメに天の岩戸の前で吹かせることによって、アマテラスが天の岩戸を出てくると言い残した。そしてその「予言」どおり、イナダヒメが笛を吹くことによって、アマテラスはその姿を現した。
 そしてアマテラスは、わが弟スサノオが息絶えたのに、誰もこれを助けなかったのかと問いかけ、嘆くが、結局、笛を天の岩戸に放り込むことによってスサノオを蘇らせ、大和の国の再建をスサノオに託すのだった。

<特徴その4 平和の国、大和の国のスタート>
 そして蘇ったスサノオは、イナダヒメによって、男と女は助け合って未来を築いていくべきことに気付いたと述べて、イナダヒメに手を差しのべた。そして「力の時代は終わった。私が心に抱く大和は平和への魁である」と宣言し、平和の国、大和のスタートを祝うのだった。
 イラク戦争と日本の民間人の人質事件のまっ只中で、日本国のあり方が問われている今、すごく問題提起となるストーリーだと感心。

<充実した3時間>
 『スサノオ』が1時間30分。休憩35分。『タカラヅカ・グローリー!』が1時間。宝塚大劇場の中で過ごす合計約3時間は私にとってすごく充実した3時間。古事記『スサノオ』のストーリーは十分理解できたし、初々しい90期生のラインダンスは、しばらく頭の中から離れそうにない・・・?これって単にスケベな中年男ということだけか・・・?
                                  2004(平成16)年4月13日記