日本映画04年NO2

「花とアリス」

                       2004(平成16)年2月27日鑑賞<東宝試写室>
監督・脚本・音楽・プロデューサー:岩井俊二
荒井花(ハナ)/鈴木杏
有栖川徹子(アリス)/蒼井優
宮本雅志/郭智博
有栖川加代(アリスの母)/相田翔子
黒柳健次(アリスの父)/平泉成
リョウ・タグチ(カメラマン)/大沢たかお
編集者現場担当/広末涼子
東宝配給・2004年・日本映画・135分

<『花とアリス』とは?>
 映画のタイトル『花とアリス』とは、実は2人の女の子の名前。すなわち、1人は荒井花(ハナ)(鈴木杏)であり、もう1人は有栖川徹子(アリス)(蒼井優)。この2人は幼なじみで仲のいい中学3年生。いつも一緒の2人だが、ハナは通学電車で見つけた高校生の宮本雅志(郭智博)に一目ボレ。2人はそろって手塚高校に進学したが、ハナは憧れの宮本先輩が所属する落語研究会へ。他方、アリスはバレエ部へ。

<記憶喪失のウソから始まる恋>
 落研の宮本先輩は、落語の文庫本を片手に、「寿限無」のセリフを覚えるのに必死。私の目からみると、宮本先輩はたしかに顔はハンサムだが、何か暗くてうっとおしい雰囲気の男の子。落語も全然うまくないから、そんなに魅力があるとは思えないが、ハナは夢中。毎日のように宮本先輩をつけ回している。
 ある日、宮本先輩をつけ回していたハナは、歩行中も本を片手に「寿限無」を暗記しようとしていた宮本先輩が、ガレージに頭をぶつけて倒れ込んだのを目撃した。意識朦朧としている宮本先輩を介抱したハナは、「君は誰?」と聞かれて、「私、ハナ」、「私を覚えていないんですか?」まではいいけれど、調子に乗って「宮本先輩は私を好きだといったことも覚えていないんですか?宮本先輩は記憶喪失です」と咄嗟のウソ。しかし朦朧となった宮本先輩がこれを信じてしまったから大変。すなわち、大半のことは記憶していても、部分的な記憶喪失となったため、自分がハナを好きだったこと、ハナに告白したこと、そしてハナとどんな付き合いをしていたのかだけはよく覚えていないというわけだ。この宮本先輩の「思い込み」に乗じて、うまく話を作っていくハナ。若くてもやはり、女はウソをつく天才か・・・?

<アリスは共犯?>
 ハナの「ウソ」の片棒を担がされたのは、もちろん親友のアリス。パソコンの中に、宮本先輩の写真がいっぱい入っていることを発見されたハナは、これは昔、宮本先輩が付き合っていたアリスが撮ったものだと何ともうまいウソ。つまり、宮本先輩とアリスは、元彼と元彼女だが、今は2人は別れて、宮本先輩はハナに愛を告白したんだ、というストーリー。アリスは、このハナの創造したストーリーに沿って、「1度私を振ったのに、また話を聞きたいと言ってくるとはどういうこと!」と冷たく突き放し、つくり話はうまく進むかのように思えたが・・・。

<デートのくり返しの中で>
 宮本先輩とハナとのデートは順調な様子(?)。他方、宮本先輩はどうも自分はハナよりもアリスの方が好きらしいと自覚してきた。そこで、なぜ自分がアリスを振ったのか、がよくわからず、そこらあたりの事情をアリスから聞くため、アリスとも再三デート。そんな中少しずつアリスの気持にも変化が・・・。さらにこんな展開の中、必然的に少しずつインチキがバレていくが、その過程が実に面白い。

<アリスの目指すものは?>
 バレエの練習に精を出しているアリスは、ある日、芸能プロダクションからモデルにスカウトされて有頂天となったが、その後のオーディションでは落ちてばかり。ハナと一緒の時は、明るくて快活なのに、オーディションになると暗くて自己アピールができず、からっきしダメ。これでは何回受けてもダメなことは誰の目にも明らかだ。しかし、最後のオーディションでのバレエのシーンは圧巻。「君、バレエができるの?」と聞かれ、さらに「ちょっとやってみて」と言われたアリスは、最初とまどったものの、意を決して堂々と・・・。いつ、これだけの実力を身につけたのかわからないが、クライマックスにふさわしい見事なシーンとなっている。そして最後には、雑誌の表紙にデカデカとモデルとなったアリスの顔が・・・。

<面白い伏線>
 本筋のストーリーにふくらみをもたせて面白くしているのが、ハナとアリスのそれぞれの家庭事情を前提としたいくつかの伏線の設定。
 その1は、アリスの母親(相田翔子)が男を連れてデートしているところで、アリスとばったり遭遇するシーン。そこでアリスの母親は「あら、こんにちは。こちら、お隣の娘さん!」と連れの男に紹介。何ともケッタイな母親だが、アリスとその母親との2人暮らしの様子が実に面白く描かれている。
 その2は、アリスと父親(平泉成)とのデート。最初はアリスが中年のオッサンと「援助交際」しているのかと思って観ていたら、実は、これがアリスの父親。まず、高校入学を祝って万年筆をプレゼントする際のおしゃべりが面白い。また「海岸でトランプをして遊んだでしょ」というアリスに対して、「そんなことあったかなぁ」という何気ない父娘の会話も後に大きく「効いて」くる。さらに、誰かが落とした携帯電話を拾ったところ、その持主の中国人から電話がかかり、意外にも父親が中国語で対応。そしてアリスと別れる際、「我愛〔イ尓〕(ウォーアイニー)」という中国語を教える場面も、後に大きく「効いて」くる。その他いくつかの伏線設定がすべて面白くからまっており、「さすが岩井俊二監督!」と感心すること請け合い。

<三角関係(?)の行方は・・・>
 記憶喪失を利用した見事なウソのストーリーは、高校生レベルの女の子が思いつくようなものとはとても思えないほど精巧なものだったが、やはりインチキはインチキ。そのうえ、最初はハナの要請に応えて元彼女役を演じていただけのアリスが、少しずつ本気で宮本先輩を好きになってきたからこりゃ大変。3人デート(?)した時の、海岸での1人の男(宮本先輩)をめぐっての女同士のつかみ合いのケンカも含めて、「いろんなこと」が「いろいろと」ややこしいことに・・・。もっとも、そのややこしくなっていく過程がすべて面白いから、この映画は面白い。そしてこの三角関係(?)の落ち着く先は・・・?それが岩井俊二監督の腕の見せどころだ。

<面白い脇役陣>
 この映画の主人公はもちろんハナとアリスの2人。そしてこの美少女2人から恋されるイイ役の宮本先輩の3人。しかし脇役陣もみんな面白い。まず第1は離婚した(はず?)のアリスの母親、有栖川加代を演ずる、私の大好きな相田翔子。言うまでもなく人気デュオ「Wink」のあの美女で、今はバラエティーでも大活躍。チョイ役だが、そのキャラが極めて明確で面白い。第2は、父親役の黒柳健次を演ずる平泉成。娘のアリスとデート(?)する場面に登場するだけだが、デート中に中国人が落とした携帯電話を発見し、これと話をする場面が面白い。そしてこの時、父親が娘に教えた「我愛〔イ尓〕(ウォーアイニー)」(I love you)という言葉が、後のアリスの宮本先輩への愛の告白(?)場面に生きてくる・・・。そしてまた「再見(ツァイツェン)」も・・・。
 この映画のラストの盛り上がりは、モデルにスカウトされながらオーディションでは落ちてばかりのアリスが、バレエを踊るシーンだが、第3に面白い脇役陣は、このシーンに登場するカメラマンの大沢たかおと編集者現場担当の広末涼子。彼(女)らは、この最後の審査シーンに登場するだけだが、バレエのシーンの見事さをうまく演出している。

<鈴木杏と蒼井優の見事な演技に感嘆!>
 ハナを演ずる鈴木杏は、11歳の時、『ヒマラヤ杉に降る雪』(00年)で工藤夕貴演ずる主人公ハツエの少女時代を瑞々しく演じた女優で、その印象は今でも強く残っている。2003年には初舞台『奇跡の人』で大竹しのぶと対抗し、続く『ハムレット』では蜷川幸雄演出のもとですばらしい舞台を見せている。1987年生まれだから、まだ17歳だが、すでにすごい女優。宮本先輩をうまくダマしたり、ヘタな落語を演じたり、女の子同士でキャッキャと言っている姿とは全く違う姿をいくつも見せてくれる。その末恐ろしい演技力には脱帽だ。
 他方、蒼井優は、1999年ミュージカル『アニー』のポリー役に、約1万人の中から選ばれてデビュー。そして10代目・三井リハウスガールとなった、1985年生まれの美少女。こういう経歴だから最後の、雑誌の表紙をかざるモデル役はお手のものというわけだ。また、バレエを踊る美しい姿は本当に圧巻。また美人であるだけでなく、この映画における演技はとにかく特筆モノ。こんな演技力を備えた2人の美少女と出会えただけでも十分満足できる作品だ。

<大好き!岩井俊二監督>
 岩井俊二監督の『Love Letter』(95年)も面白かったが、何といっても私が大好きなのは『スワロウテイル』(96年)。映画はバカ面白かったし、CHARAが歌う『Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜』は私の大好きなナンバーの1つ。オッサンが歌ってもあまりサマになる曲ではないが、昔、飲み屋で何回か女の子と一緒に歌った曲だ。この『花とアリス』に出演している蒼井優と郭智博は、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』(01年)に出演した2人とのことだが、残念ながら私はこの『リリイ・シュシュのすべて』は観ていない。次の機会には必ず観ておかなくては・・・。岩井俊二監督大好き!そしてこんな映画、大好き!
                                   2004(平成16)年2月28日記