洋画03年NO104

「ヘブン・アンド・アース」
       
(天地英雄/Warriors of Heaven and Earth)


            2003(平成15)年12月17日鑑賞<ソニー・ピクチャーズ試写室>
(何平(フー・ピン)監督/中井貴一/姜文(チアン・ウェン)/趙薇(ヴィッキー・チャオ)/王学圻(ワン・シュエチー)(配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)(2003年/中国映画/118分)

<西域を舞台としたー大スペクタクル>
 この映画のタイトルは『Warriors of Heaven and Earth』だが、『天地英雄』という中国タイトルも実にピッタリ。
 西田敏行、渡瀬恒彦、佐藤浩市らが出演し、中国の宋の時代における西域の新興国「西夏」に焦点をあて、その王に仕える漢人部隊との戦いや敦煌の莫高窟(ばっこうくつ)に生命を賭して仏教典を隠す仏教徒たちの姿を描いた映画『敦煌』(88年)は、日本映画(東宝)の傑作だった。これに対し、唐の時代の西域地方を舞台としたー大スペクタクル『天地英雄』は中国映画。もっとも中国だけではなく、日本、インドそしてハリウッドのプロデュースチームも参加した国際色豊かな超大作だ。
 西域とは、西安の都を中心とした中国から見た西方地域全般を総称する言葉で、今は新疆、ウィグル地区と言われている地方だ。6〜7世紀、この地域には「西域36ヶ国」があり、また突厥(とっけつ)というトルコ系遊牧騎馬民族の国があった。
 この時日本は、唐の国へ「遣唐使」を派遣して文化交流につとめていた。主人公の1人、来栖旅人(くるす・たびと)(中井貴一)は13才の時に唐の国へやってきた遣唐使。彼は今、突厥の侵略に備える西域警備の最前線の町、拓厥関(たくけつかん)にいた。来栖は皇帝から、反逆者の李(リー)を殺す任務を与えられ、それを達成すれば日本へ帰れることになっていたのだった。

<反逆者は姜文(チアン・ウェン)>
 もう1人の主人公、李を演ずるのは、中国で最も有名な俳優の姜文。李は今は反逆者とされ、隊商の護衛をしながら逃亡生活をしているが、彼の反逆は、命令に違反してまでも武器を持たない者を殺さなかったこと。このことからわかるように、彼は無骨者だが優れた武術や知略、そしてリーダーシップのみならず、実は優しい心を持ったナイスガイ。
 従って紅一点としてただ1人登場する女性である司令官の娘、文珠(趙薇)は、次第にこの李の魅力に惹かれていくが・・・。

<天竺から長安へのキャラバン隊>
 インドの天竺(てんじく)は、仏教の聖地。今ここから唐の都長安へ10万冊の仏教経典を運ぶラクダの隊商が出発した。しかしこのキャラバン隊は砂嵐に巻き込まれて壊滅的な被害を受けた。生き残ったのは若き僧侶、覚慧(カクケイ)と唐の護衛兵ただ1人のみ。
 そんな時、同じ砂嵐に巻き込まれた李は、この護衛兵によって助けられたため、自らこのキャラバン護衛の任にあたったが・・・。

<悪役は安>
 西域一帯を縄張りとしている盗賊団のボスが安(ワン・シュエチー)(王学圻)。キザに二胡を弾いたりして芸術家気取りだが、剣術の腕前は超一流の上、冷酷非道な精神の持ち主。安は突厥軍と結託してキャラバン隊の献上品の強奪を狙っていた。
 安が執拗にこの献上品を狙うのはなぜか?献上品は10万冊の仏教経典だけではないのか・・・?それを知っているのは僧侶の覚慧・・・。

<美しいシルクロードでの死闘>
 シルクロードを進むキャラバン隊の旅は観ていると実に美しい。しかし現実は、自然との闘い、そして水との闘いだ。
 そのうえ李が護衛するキャラバン隊は、安の率いる盗賊団から執拗な追撃を受けていた。そして何といっても多勢に無勢。闘いのたびに李は信頼する部下を失っていった。こんな李を応援したのは、何と来栖。なぜなら、来栖は李がキャラバン隊を長安まで無事に送り届けた後、李と雌雄を決すると約束したから。つまりムザムザと途中で李が盗賊団に殺されたのでは困るからだ。
 当初はこんな余裕を持ちながら李やキャラバン隊を応援していた来栖だったが、キャラバン隊は次第に追い詰められていった。そしてその中で生まれてくる男同士の信頼と友情。果たして2人は無事に長安に辿り着き、決闘の日を迎えることができるのだろうか・・・?

<砦にこもった最後の攻防戦>
 長安に向かう途中、突厥軍との闘いのために建てられた小孤城という砦に到着したキャラバン隊だったが、そこは既に無人となっており、李は自分たちだけでこの砦に向かってくる突厥軍と闘わなければならなかった。精一杯の武器を準備し、闘いに備える李隊長や来栖。
 そこに現れる無数の突厥軍。あたかも、迫りくるメキシコの大軍をテキサスの義勇軍がアラモ砦にこもって迎え撃ち、13日間の激闘の末に全滅するという姿を描いたジョン・ウェイン主演の名作『アラモ』(60年)を彷彿させる最後のクライマックス場面だ。その闘いぶりは実に壮絶!部下たちは1人また1人と殺され、李や来栖たちも傷つき、そして遂に追い詰められていった・・・。

<キャラバン隊が運んでいた宝物は?>
 キャラバン隊が運んでいた宝物は、仏陀の遺骨である仏舎利の入った黄金の仏塔だった。そしてこの仏舎利は、不思議な力を秘めており、これから200年近く続く、「大唐帝国」の礎を築くパワーをもつものだった・・・。
 それまでのシルクロードの美しい砂漠とリアリズムを追及した激しい戦闘アクションとはうって変わり、スクリーン上には突然不思議な画面が展開される。そして意外な結末でラストを迎えることになる。
 「あっ、マトリックスの世界に入ったな!」と一瞬思ったが、まあ、この程度のつくりゴトは仕方ないかと納得・・・。
 しかし本心を言えば、このようなCGを使わず、正攻法で本格的なエンディングにして欲しかったと思うのだが・・・。
                            2003(平成15)年12月17日記