洋画03年NO37

「トーク・トゥ・ハー talk to her」

                   2003(平成15)年5月28日鑑賞<ヘラルド試写室>
(ペドロ・アルモドバル監督/レオノール・ワトリング/ハビエル・カマラ/ダリオ・グランディネッティ/ロサリオ・フローレス/ジェラルディン・チャップリン)(配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ)

<昏睡状態の2人の女性>
 交通事故のため、昏睡状態で眠り続ける元バレリーナ、アリシア(レオノール・ワトリング)。しかし、彼女は一人ではない、精神医の父親が、アリシアのために雇った看護士のベニグノ(ハビエル・カマラ)がいるからだ。ベニグノは4年間眠り続けるアリシアの髪や爪の手入れをし、体を拭き、クリームを塗り、服を着替えさせていた。そして、昏睡状態の彼女に対し、日々の出来事や今日観てきた感動的な舞台の様子を語りかけていた。ベニグノと昏睡状態のアリシアとの間には他人には到底分からないコミュニケーションがあったのだ。

 もう1人の昏睡状態の女性リディア(ロサリオ・フローレス)は女闘牛士。父親の希望通りに、女闘牛士になったリディアは、競技中、牛の角につかれて入院、昏睡状態になってしまった。こんなリディアを看護するのは、ふとしたことで、リディアの取材に入ったマルコ(ダリオ・グランディネッティ)。マルコはこの取材の中、いつの間にかリディアの恋人になっていたのだ。しかし、マルコはベニグノのような看護のやり方は到底出来ず、リディアに触れたり、話しかけたりすることもできず。ただ、ふさぎこんでいた。

<2人の男の間に生まれる友情>
 いつの間にかこんな似たような境遇の2人の間に友情が。2人はそれぞれ大切な自分の女性をテラスに連れ出して、日光浴をさせたり・・・。そんな中、ベニグノはマルコに対して、昏睡状態の彼女とのコミュニケーションをさかんに訴えたが・・・。

 マルコの看護の甲斐もなく、リディアは死亡。傷心のマルコは一人旅立った。そして、そんな中、アリシアとベニグノに思いもかけない大事件が発生した。

<女体の神秘とこの映画製作の意図>
 昏睡状態の女性アリシアを看護することは、その女性の身体すべてを知り尽くすことになるのは当然。それを男のベニグノが、4年間も献身的に続けてきたことは驚異的だし、ある意味では変態気味・・・。
 そんなアリシアの生理が遅れている!そして・・・。何と、アリシアは妊娠していたのだ!「アリシアをレイプしたのは誰だ!」。その疑いは当然ベニグノに向けられた。

 監督のペドロ・アルモドバルは、この作品を生んだ5つのインスピレーションを挙げているが、そのうちの3つは次の通りだ。すなわち、
 @アメリカ女性が16年の昏睡状態から目覚めたというニュース。
 Aルーマニアの死体安置所で、若い女性の死体の美しさに惑わされた夜警の若者が、孤独感から性交渉に及び、彼女が息を吹き返したという事件。
 B9年間脳死状態を続けていたニューヨークの女性が妊娠したという事件。
まさに、この映画は、このインスピレーションの通り、昏睡状態のアリシアが妊娠して、子供を産み、さらにそれによって意識を取り戻すという姿を1つの神秘的なモチーフとして描いている。

<ベニグノの運命は・・・>
 情況証拠によって、犯人はベニグノとされ、ベニグノは今刑務所に入っている。それを知った親友のマルコは刑務所へ赴きベニグノと再会。ベニグノの「無実」を確信した。
 そして、マルコはアリシアの事件を調べ、アリシアの父親からも事情を聞いた。もちろん、ベニグノはアリシアが子供を産んだことなど知らされておらず、すべての情報から隔離されたままだ。しかしマルコは、アリシアの父親から、生まれた子供の事やアリシアの状況をベニグノに話すことは固く口止めされている。悩むマルコ。そんな中、ベニグノは大量の睡眠薬を飲んで自殺。何とも悲しい結末だ・・・。
 
<難しいスペイン映画>
 この映画は難しい!
 2人の昏睡状態の女性とその恋人の2人の男性、合計4人の孤独が淡々と描かれている。
 1つの男女関係は、昏睡状態で4年間にわたって眠り続けるバレリーナ、アリシアと看護士ベニグノとの関係。これは極めて異例で、理解しにくい男女関係だ。まして、看護士が日々の出来事を昏睡中の女性に語りかけ、4年間対話を続けているということ自体が驚異的。この映画のタイトル『トーク・トゥ・ハー talk to her』の意味はわかるが、その「重み」はなかなか実感できない。。
 もう一つ、女闘牛士リディアとマルコとの恋は分かりやすい。リディアの取材をきっかけとして恋愛がはじまり、リディアの競技中の事故、入院、そして昏睡状態のリディアの看護、リディアの死亡、マルコの絶望という流れは、実によく分かる。
 そして、2人の女が結びつけた2人の男たちの友情の芽生えも何となく分かる。
 しかし、残ったマルコと子供を生み昏睡状態から生き返ったアリシアは、それぞれ今後どのように生きていくだろうか・・・。映画は、これについて「ヒント」を与えているようだが、私にはもう一つ分からないところがある。
 ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞等、多数の賞を受賞した2002年のスペイン映画だが、私には非常に難しい。是非皆さんの御意見をお聞きしたいと思う。
                                   2003(平成15)年5月29日記