洋11-94
「カメリア(時にあらがう三つの物語)」
2011(平成23)年9月21日鑑賞<東映試写室>
第1話『IRON PUSSY』 ![]()
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第2話『Kamome』 ![]()
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第3話『LOVE FOR SALE』 ![]()
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2011年・タイ、日本、韓国合作映画・143分
配給/東映
<舞台は釜山、テーマは愛、さて3話のオムニバスは?>
本作は、釜山国際映画祭製作の3話のオムニバス。タイ、日本、韓国からウィシット・サーサナティアン(タイ)、行定勲(日本)、チャン・ジュナン(韓国)という3人の監督が参加して、釜山を舞台とし、テーマを愛とした、過去、現在、未来に渡る3つの物語をそれぞれ描き分けた。私は2000年8月に初めて中国の大連・旅順・瀋陽旅行に行き、以降中国旅行にハマってしまったが、それ以前は韓国旅行専門(?)だった。1995年9月にソウル旅行したのを手始めに、翌1996年5月には再度ソウルへ、そして6月には釜山へ旅行したが、この頃はあらゆる意味で今とは全く違う、「遊び」主体の大名旅行。その意味するところは複雑かつ微妙だが、釜山旅行では太陽の下でキラキラと輝く海岸の美しさと日本に比べるとかなりひなびた海岸近くの商店街が印象に残っている。さらに、あの当時韓国旅行にうつつを抜かしていた多くの日本人男性は、いわゆる「現地妻」を持っていることを自慢にしていた(?)から、ひょっとしたらそんな刺激に富んだ愛の物語もたくさんあったのかも・・・?
もっとも、本作に登場する釜山を舞台にした3つの愛の物語はそんな生々しいもの(?)ではなく、3人の監督の才能を競い合うかのようなオリジナリティ溢れた愛の物語。さて、その競い合いは?
第1話『IRON PUSSY』
監督:ウィシット・サーサナティアン
アイアン・プッシー(板前)/ミシェル・シャオワナサイ
ジホン/キム・ミンジュン
<第1話のタイ映画は、インド映画に近い?>
インド映画はミュージカルのように音楽と踊りが充満しているのが特徴だが、朴正煕大統領が暗殺された1979年の時代を軸として描いたタイのウィシット・サーサナティアン監督のコミカルな愛の物語は、そんなインド映画を彷彿させるもの。表の顔は飲食店で働く冴えない板前のオヤジだが、仕事の時は女スパイに変身して任務をこなす必殺仕事人。それが、ウィシット・サーサナティアン監督がつくり出した本作の主人公アイアン・プッシーだ。そのアイアン・プッシーが、ある夜のクラブで一目惚れしたイケメン韓国人男性ジホン(キム・ミンジュン)と一緒に歌い踊るシーンはまるでミュージカル。
映画のストーリーとしては、『スパイ大作戦』もどき(?)の録音テープの声によってアイアン・プッシーが暗殺指令を受けたターゲットが、そのジホンだったことがミソ。さあアイアン・プッシーは任務に忠実に?それとも愛に忠実に?そして、タイから韓国に送り込まれた彼(彼女)は釜山でいかなる活躍を?
<幼稚な出来に失望>
そんな風に書けばそれなりに面白そうなストーリーだが、私が本作に全然共感できなかったのは、第1にアイアン・プッシーを演ずるミシェル・シャオワナサイが全然魅力的でなかったこと。プレスシートに載っている写真も女装しているから、そもそもこの俳優は男なのか女なのかがはっきりしないが、ミシェルという名前から見ても、またごく自然な板前のオヤジヅラからしても、こりゃまちがいなく男。したがって、その女装姿は基本的にムリ!さらに女装スパイへの変身を強調するためレトロかつ華麗なるファッションを特徴とさせたのだが、そのケッタイなファッション(?)に何の魅力も感じないからどうしようもない。やっぱり、主役を演ずる女性はそれなりの美人でなくっちゃ・・・。
共感できなかった第2の理由は、互いに秘密の任務を抱えたアイアン・プッシーとジホンがなぜロミオとジュリエットのような純愛(?)に落ちたのかがサッパリわからないうえ、その展開があまりに幼稚なこと。ラストに向けて時代は1979年から突如20数年後の現在に移行するが、そこで再会した(?)2人はいかなる結末を?
第2話『Kamome』
監督:行定勲
パク・ヨンス(撮影監督)/ソル・ギョング
カモメ/吉高由里子
<釜山にはカモメがピッタリ!>
第2話『Kamome』は日本の行定勲監督によるものだが、空を飛ぶカモメが釜山の海岸にこんなにピッタリなことにビックリ!そして、第1話のミシェル・シャオワナサイとは大違いの透明な美しさを見せる吉高由里子が、なぜ「カモメ」と名乗るのか(のナゾ?)に注目!
本作冒頭は、釜山の海岸を舞台とするある映画の製作で、ワガママ女優に振り回されている撮影風景が展開される。撮影監督のパク・ヨンス(ソル・ギョング)はそんな中でも真面目に撮影監督を務めていたが、あるつまらない理由で急遽撮影中止とされてしまったその日の夜から、物語は急転換。すると、映画冒頭のあのシークエンスの意味は?私は映画の途中からずっとそのことを考えていたが、「カモメ」と名乗る女の子がパク・ヨンスの前から消えてしまった後、昨日の撮影シーンのテストをしてみると・・・?
なるほど、こういう構成だったのか!「カモメ」と名乗る女の子とパク・ヨンスの2人が釜山のまちと海岸を歩き回る一夜を軸として、わずか2日間だけの出来事を描いた本作は、それぞれ45分という持ち時間の中での完成度において断トツ!
<韓・日・英のチャンポン会話から生まれたものは?>
海のまち、釜山の冬は寒い。したがって、そんな釜山のまちの中を薄い服を着て裸足で歩いている人がいれば、誰だってビックリするはず。まして、それが若い美人なら・・・。その日の撮影における主演女優のワガママぶりに疲れ果てたパク・ヨンスが、そんな日本人女性「カモメ」に注目したのは当然だが、本作ではそのメインストーリーとして構成される「カモメ」とパク・ヨンスの韓国語、日本語、英語がチャンポンになった、たどたどしい会話が面白い。
当初はほとんど通じなかった2人の会話も、打ち解けてくるにしたがって互いの理解度が深まったのは当然。その結果、「カモメ」の父親は韓国人だったという身の上話まで。しかも、「カモメ」が子供の頃、カモメをテーマとした有名な韓国ソングをよく歌って聞かせてくれたなどと語り出せば、誰だってさらに「カモメ」に対して興味を覚えるはずだ。真冬の深夜の釜山の海岸はきっと零下に冷えているだろうから、仲良く並んで寝そべっているうち、急に「カモメ」が「おしっこしたい」と言い始めたのもなるほどだが、その後完全にパク・ヨンスの前から消えてしまった彼女は一体ナニモノ?そして、韓国語、日本語、英語のチャンポン会話の中から生まれたものは?
第3話『LOVE FOR SALE』
監督:チャン・ジュナン
ジェイ/カン・ドンウォン
ボラ/ソン・ヘギョ
<ひょっとして、ホントにこんなビジネスが・・・>
チャン・ジュナン監督の第3話は近未来の釜山が舞台だが、その近未来では、脳から愛の感情と記憶を取り出して保存することが可能となっていたらしい。したがって、そこでは愛を脳から取り出し、それを売り買いするビジネスが大盛況だったが、ラブホテルをはじめとするラブビジネスに進出してくる業者はヤクザが多く、問題あり?
映画冒頭に展開されるのは、恋人のボラ(ソン・ヘギョ)を救おうと必死に戦う主人公ジェイ(カン・ドンウォン)があやうく命を落としそうになるシークエンスだが、こんな命をかけた愛こそが近未来の人間が求める最高の愛。そんな愛を脳から取り出すことができたら、商売は大繁盛まちがいなしだ。何十年か前までは1人1人がケータイを持つことや、瞬時に世界中の誰とでもネットワークでつながることなど考えられなかったが、今やそれはあたり前。さらに、今でも人工授精はもちろん、クローン人間まで可能とされているのだから、近未来ともなれば、ひょっとして、ホントにこんなビジネスが・・・。
<あまりのややこしさに頭がクラクラ?>
ジェイを演じるカン・ドンウォンは、『オオカミの誘惑』(05年)(『シネマルーム7』122頁参照)や『デュエリスト』(05年)(『シネマルーム10』117頁参照)、『私たちの幸せな時間』(06年)(『シネマルーム13』99頁参照)、『義兄弟』(10年)で、私にもお馴染みの若手イケメン韓流スター。本作では、そんなカン・ドンウォン演ずるジェイがほとんど死にかけてしまったり、顔をボコボコにされながらも不死鳥のようによみがえり、愛する女ボラを助け出すためラブビジネスを牛耳る悪の組織に立ち向かっていくが、やはり徒手空拳でなかなかしんどそう。そんな紆余曲折(?)を経て、やっとジェイはボラと再会することができるのだが、その時のボラは一体どんな立場に?
そもそも、そんな結論的シークエンス自体がかなり難しいが、そこに至るまでの過程も超ややこしいから、本作を鑑賞中の私の頭は常にクラクラ。そう考えると本作は、テーマとしては面白いが、これを45分にまとめるのは少しムリがあったのでは・・・。
2011(平成23)年9月22日記